2018年8月20日月曜日

腹膜透析と血液透析で認知機能に差が出るのか?

Peritoneal dialysis is associated with better cognitive function than hemodialysis over a one-year course.

Kidney Int. 2018 Feb;93(2):430-438. 

Abstract(一部)
末期腎不全患者の認知機能低下は複雑な内服,食事療法,医学的な意思決定に影響を及ぼす.腎機能が低下するにつれ認知機能も低下する傾向にあるが,透析の開始で認知機能の改善を得たり,腎移植によって回復することさえ認める.
しかしながら,治療法の違いによる認知機能の変化はほとんど知られていない.
我々は,1年間の認知機能を,腹膜透析(以下PD)と血液透析(以下HD)で比較した.
Trail Making Test-Bとd2-Revision-Testを用いて評価し,また,Kidney Disease Quality of Life Short Form Cognitive Function-subscaleを患者が記入した.
271名が組み込まれ,ベースラインと1年後を評価した.
HD患者96名,PD患者101名を,propensity scoreを用い,年齢,併存疾患,教育,雇用状況で調整した.
PD患者はHD患者よりもベースライン,1年後共に良い結果であったが,群間の比較は困難であった.また,HD患者ではPD患者よりも脱落が多く,バイアスがかかる可能性があり一般化は難しい.
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PDとHDで認知機能障害に差が出るのか調べた論文.
自分の翻訳能力の無さにびっくりしつつ,この論文で示されたことはPD,HDで単純に比較はできない事,1年間では差が出ない事,といったところ.
分かりやすいのはこの図です.
一番左は低いほど良好で,右2つは高いほど良好です.
一番右のKDQOL-CFが問診票を使ったやつなんですが,PD患者では低い傾向です.
まぁ臨床的に有意な差かどうか一年くらいではなんとも言えないですし,PD患者のほうがベースラインの認知機能がよいので認知機能の低下を実感しやすい(今まで出来てたものが出来なくなった実感が大きい)というのはあるかもしれません.

さて,この論文に対するcommentaryも出ています(Kidney International (2018) 93, 306–308;)
こちらも脱落の多さ,フォローアップ期間の短さは問題点に挙げています.
同時にstudyの難しさについて言及されています.

こういう分野は良質なエビデンスの構築が難しいですね.

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