2017年12月24日日曜日

バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタムの併用はAKIのリスクを増す

Vancomycin Plus Piperacillin-Tazobactam and Acute Kidney Injury in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis

Critical Care Medicine: January 2018 - Volume 46 - Issue 1 - p 12–20

Abstract
■Objectives
集中治療患者における,一般的な成人の,AKIと,バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタム併用を調べた.AKIの比率,AKIまでの時間,そしてオッズ比をバンコマイシン単剤,バンコマイシン+セフェピムもしくはカルバペネム,ピペラシリン/タゾバクタム単剤と比較した.
■Data Sources
Pubmed, Embase, Web of science, Cochraneにて検索した.
■Study Selection
英語ではないもの,小児,ケースレポートは除外した.
■Data Extraction
2名が独立して抽出した.
■Data Synthesis
15の出版された論文と,17のアブストラクトがあり,少なくとも24799名の患者がいた.
AKIの全発症率は16.7%で,うち22.2%がバンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタム併用であり,比較対象は12.9%であった.
number needed to harmは11であった.AKIに至る時間は,バンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタム併用で速い傾向にあったが,有意差はなかった (mean difference, –1.30; 95% CI, –3.00 to 0.41 d)
オッズ比は,バンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタム併用が,バンコマイシン単剤に対して3.4(95% CI, 2.57–4.50), セフェピムもしくはカルバペネムとの併用に対して2.68(95% CI, 1.83–3.91), ピペラシリン/タゾバクタム単独に対して2.7(95% CI, 1.97–3.69)であった.
968名の重症患者でのサブ解析では,バンコマイシン単独でオッズ比9.62(95% CI, 4.48–20.68)だったが,バンコマイシン+セフェピムもしくはカルバペネムとの併用,ピペラシリン/タゾバクタム単独では有意差はなかった(前者odds ratio, 1.43; 95% CI, 0.83–2.47,後者odds ratio, 1.35; 95% CI, 0.86–2.11).
■Conclusions
バンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタムでは,バンコマイシン単独,バンコマイシン+セフェピムもしくはカルバペネム,ピペラシリン/タゾバクタム併用に比較してAKIのオッズ比が高かった.重症患者での限られたデータでは,バンコマイシン単独と比較するとAKIのオッズ比は高かったが,他の群との比較では有意差はなかった.
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巷で話題の(?),抗菌薬とAKIの関係.
同じ話題が,他のジャーナルでも取り上げられたりしてます(Clin Infect Dis. 2017 Jan 15;64(2):116-123.)

抗菌薬の選択はアートの部分が大きいと感じます.感染症を専門にしている先生方は狭域にすることも多いと思いますし,そうでない人は軽症でも炎症が高いという理由でカルバペネムが入っていることはよく見かけます.(もちろんCRPが高ければ重症感染症を示唆するという報告も散見するので,否定はしません.話が逸れるのでここでは割愛します)

そんな中で,今回の論文.PIPC/TAZ+VCMはAKIリスク増やす,という結論.
例えば想起し得る感染症(原因菌)に対して,かならずしもピペラシリン/タゾバクタムでなくていいなら,他の抗菌薬を優先する,という判断にはなるかもしれませんね.(脳症に気を付けつつセフェピムを使う,等)

2017年12月4日月曜日

in the literature:IgA腎症におけるステロイド

Corticosteroids in IgA Nephropathy

Am J Kidney Dis. 2017 (article in press)
DOI: http://dx.doi.org/10.1053/j.ajkd.2017.10.004

TESTING studyや,STOP-IgAN trialの結果などを踏まえての,IgA腎症におけるステロイドを論じたもの.
今までの結果が分かりやすくまとまっています.

おおざっぱに(恐れ多くも)まとめてしまえば,

・ TESTING studyではステロイドが否定されたわけではなく,一定の効果は示しており,腎機能が悪い患者がいることなどが,副作用が大きくなった原因ではないか
. STOP-IgAN trialでは蛋白尿が軽微(1g/day未満)だったりマイルドなeGFR低下例が参加していたことで,ステロイドの有用性が示せなかったのではないか
(他にも2つ論文が示され,ステロイドの有効性が論じられています)
・ というわけで,我々としてはeGFR 30以上で,蛋白尿1g/day以上の症例ならステロイドで治療するメリットがあると考えている

という内容.ステロイドも,内服は可能なら隔日投与にするようです.
隔日投与は一般的に行われることも多いと思いますが.
(up to dateにも記載があります)

著者は,一人はNEFIGAN study(Lancet. 2017 May 27;389(10084):2117-2127.)のメンバーみたいです.
まだphase 2b trialなので紹介しませんでしたが,こちらの結果も楽しみです.