2017年8月29日火曜日

尿中NH4+は血中HCO3-よりも優れた酸塩基平衡傷害の指標になるか?

Urine Ammonium Predicts Clinical Outcomes in
Hypertensive Kidney Disease

J Am Soc Nephrol 28: 2483–2490, 2017.

■ABSTRACT
代謝性アシドーシスはCKDの予後と関連する.
腎におけるアンモニアの排泄障害は,アシドーシスの病因として重要であり,特にアシドーシスを認めない人において,尿中アンモニウムイオンは血中HCO3-よりも早期の酸塩基平衡障害の指標になるかもしれない.
我々は,尿中アンモニウムイオンの量とアウトカムについて調べた.
African American Study of Kidney Disease and Hypertension participants (n=1044)にて評価した.
尿中アンモニウムイオン/dayの中央値は19.5mEqであった(95% confidence interval [95% CI], 6.5 to 43.2)
Cox回帰分析 (adjusted for demographics, measured GFR, 蛋白尿, BMI, net endogenous acid production, and serum potassium and bicarbonate)では,死亡と透析の複合アウトカムにおいて,high tertitleと比較してlow tertileではハザード比1.46(95% CI, 1.13 to 1.87) ,middle tertileでは1.14 (95% CI, 0.89 to 1.46)であった.
ベースラインでアシドーシスがない患者では,尿中アンモニウムイオン/dayが,20mEq未満の群では,20mEq以上の群と比較して,ハザード比が1.36であった (95% CI, 1.09 to 1.71).
更に,high ammonium tertitleと比較して,1年以内にアシドーシスを呈するオッズはlow ammonium tertileで高かった(adjusted odds ratio, 2.56; 95% CI, 1.04 to 6.27).
結論として,尿中アンモニウムイオンの排泄低下は高血圧性腎症において,アシドーシスが無い人でも,死亡・腎不全と関連していた.HCO3-が正常でも,アシドーシスを呈する前に,尿中アンモニウムイオン排泄が低下している人を特定しアルカリ製剤を投与することが有益かもしれない.
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今は日本のCKDガイドラインでも,KDIGOのガイドラインでも,酸塩基平衡への介入はHCO3-が主体です.HCO3-を20mEq/l以上にすることがCKDの進行を抑える,ということでHCO3-が20mEq/lよりも低ければ炭酸水素ナトリウムなどの使用が推奨されています.(KDIGOでは22mEq/l)
今回の論文は,HCO3-が正常な人でも,もっと早期に介入できる指標があるんではないの?っていうことで尿中アンモニウムイオンを評価したもの.
尿中NH4+で治療する群とHCO3-で治療介入する群での比較が必要だと思うので現時点で診療の方針に変更はないけど,今後こういうstudyが出てくるんでしょうか.

2017年8月14日月曜日

IgA腎症に対するステロイドの効果(TESTING study)

Effect of Oral Methylprednisolone on Clinical Outcomes in Patients With IgA Nephropathy

The TESTING Randomized Clinical Trial

JAMA. 2017;318(5):432-442. 

Abstract
■Importance
ガイドラインではIgA腎症で蛋白尿が持続する場合にステロイドを推奨しているが,その効果は分かっていない.
■Objective
ステロイドの効果と安全性を評価する.
■Design, Setting, and Participants
多施設,二重盲検化,ランダム化試験であり,750人のIgA腎症の患者(蛋白尿 1g/day以上でeGFR 20~120の患者で,RAS系阻害薬を少なくとも3ヶ月以上内服している)を,335症例のプライマリーアウトカムが評価できるまで追跡した.
■Interventions
メチルプレドニゾロン内服(0.6-0.8mg/kg/day, 最大48mg/day) 136人とプラセボ群 126人に振り分け,2か月間内服しその後4-6ヶ月で漸減した.
■Main Outcomes and Measures
プライマリー複合アウトカムはESRD, 腎不全による死亡,eGFRの40%の低下とした.
安全性の評価は感染,新規の糖尿病,消化管出血,骨折/骨壊死,心血管イベントとした.
これらの評価の為,5年間のフォローアップが必要だと判断した.
■Results
262人の患者を振り分けた後(平均年齢38.6 [SD, 11.1] years; 96 [37%] women; eGFR, 59.4 mL/min/1.73 m2; 蛋白尿 2.40 g/day) ,中央値で2.1年フォローアップした.深刻な副作用のため試験は中止となった.メチルプレドニゾロン内服群で20人(14.7%)の患者に深刻なイベントが生じた.(プラセボ群は4人, 3.2%,P = .001; risk difference, 11.5% [95% CI, 4.8%-18.2%])
感染症が多く (11 [8.1%] vs 0; risk difference, 8.1% [95% CI, 3.5%-13.9%]; P < .001), そのうち2名が死亡した.
腎臓のアウトカムはメチルプレドニゾロン内服群 8人(5.9%)で,プラセボ群では20人(15.9%)であった.
 (hazard ratio, 0.37 [95% CI, 0.17-0.85]; risk difference, 10.0% [95% CI, 2.5%-17.9%]; P = .02).
■Conclusions and Relevance
経口プレドニゾロン内服は深刻な副作用,特に感染症を増やした.腎臓に対する潜在的な利益はありそうだが,試験の早期終了の為,結論付けはできない.
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最近IgA腎症が熱いのでしょうか.
以前にもSTOP-IgAN study(N Engl J Med. 2015 Dec 3;373(23):2225-36.)で,支持療法だけでいいんではないかっていう結果でした.(急速に腎機能悪化する症例などは除外されていましたが)
本論文も,経口ステロイド単独でも,やはりデメリット>メリットかもしれないという結論.
免疫抑制剤の投与は慎重に判断するべきなんでしょうね.

一方,日本の2014年のIgA腎症のガイドラインでは,蛋白尿が0.5g/day以上あれば腎機能に関わらず,ステロイド考慮という記載もあります.
どちらかといえば日本は「早いうちに叩け!」っていう施設が多いような気もしますが,2017年のガイドラインではどう変わったのでしょうか.そういえば注文してなかった….