2017年11月13日月曜日

ADPKDにおける,腎障害進行例でのトルバプタン(サムスカ®)の効果(REPRISE Trial)

Tolvaptan in Later-Stage Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease(REPRISE Trial)

N Engl J Med. 2017 Nov 4.

Abstract(一部抜粋)
■Background 
過去の論文では,腎障害が軽微(推定クレアチニンクリアランス≧60ml/min)なADPKD患者において,トルバプタンが腎容量の増加とGFRのの低下を遅くするという結果であった.しかし,同時にアミノトランスフェラーゼとビリルビンの上昇を認めていた.より腎障害の進行したADPKD患者において,トルバプタンの効果と安全性は分かっていない.
■Methods 
他施設ランダム化比較試験.
ランダム化の前に,8週間の導入期を設け,副作用などを確認した.
18-55歳でeGFR 25~65と,56-65歳でeGFR 25-44の患者,1370人がランダム化され12ヶ月の試験を行った.
プライマリーエンドポイントはeGFRのベースラインからの変化とし,安全性は毎月検証した.
■Results 
トルバプタン内服群で,eGFRの低下は-2.34(95% confidence interval [CI], -2.81 to -1.87)であり,プラセボ群では-3.61 (95% CI, -4.08 to -3.14)であった.(difference, 1.27 ml per minute per 1.73 m2; 95% CI, 0.86 to 1.68; P<0.001). 
アミノトランスフェラーゼの上昇(>上限の3倍)はトルバプタン群で681人中38人(5.6%)に認め,プラセボ群では685人中8人(1.2%)で認めた.トルバプタン内服中止によって正常に戻った.ビリルビンの上限の2倍以上の上昇は認めなかった.
■Conclusions 
トルバプタンは腎障害が進んだADPKD患者においても,12ヶ月間において,eGFRの低下を抑えられた.(Funded by Otsuka Pharmaceuticals and Otsuka Pharmaceutical Development and Commercialization; REPRISE ClinicalTrials.gov number, NCT02160145 .).
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ADPKDのトルバプタンに関する話題.
早期腎症だけでなく,ある程度進行していても効果がありそう,という結果.
日本では既にメジャーな治療薬になっていると感じますが,アメリカではまだ未承認なんですね.なのでphase3試験,ということです.

他に一般的な血圧管理や脂質管理などしかやれることがない以上,トルバプタンは必要ですね.

一方で,ADPKD患者における死因の大きな原因は,心臓(36%),感染症(24%),脳血管(12%)となっています(J Am Soc Nephrol. 1995 Jun;5(12):2048-56.)
脳血管の12%の内訳は,脳動脈瘤破裂が6%,脳出血が5%,脳梗塞が1%となっています.
トルバプタンのADPKDにおける,腎障害進行の抑制効果は検証されていますが,今後は心臓,脳動脈瘤破裂などのイベントをどのように抑えられるか,感染症は減るのか,というところが大事になってくるのではないかと感じます.

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