2017年11月27日月曜日

維持透析患者の大動脈弁狭窄症では,外科的手術よりも経カテーテル治療のほうが死亡率などの結果が良い

Outcomes of Transcatheter and Surgical Aortic Valve Replacement in Patients on Maintenance Dialysis.

The American Journal of Medicine (2017) 130, 1464.e1-1464.e11

Abstract
■BACKGROUND
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の登場で,多くのハイリスク患者において,治療方法が拡大した.しかし,透析患者については不透明なままである.
本論文では,外科的大動脈弁置換術(SAVR)とTAVRの院内死亡率などを検証した.
■METHODS
2005年1月1日~2014年12月31日においてSAVRもしくはTAVRを受けた維持透析患者を対象とした.それぞれの傾向,院内死亡率,合併症,入院日数,コスト,中間介護施設利用を2群間で比較した(propensity-machedによって行った)
■RESULTS
合計で2531人が大動脈弁置換を受け,その内2264人がSAVR, 267人がTAVRであった.
Propensity score matchingにより 197 人ずつを検証した. 
SAVR群はTAVR群と比較して院内死亡率が2倍であった(13.7% vs 6.1%, P = .021). 
TAVR群では恒久的ペースメーカー留置が多かった(13.2% vs 5.6%, P = .012)が,輸血は少なかった (43.7% vs 56.8%, P = .02).
他の合併症は同様であった.
入院日数と自宅以外への退院は,SAVR群で多かった (19 ± 16 vs 11 ± 11 days, P <.001,44.7% vs 31.5%, P = .002) .
入院コストはTAVRが25%低かった.
■CONCLUSION
維持透析患者では,TAVRが院内死亡率の低下やコストの低下に関連していた.
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今流行(?)のTAVIに関する報告.
値段が高いとか(患者さんの負担は保険なので上限ありますが),超高齢者への適応はどうなんだとか,いろいろ議論はあると思いますが,今回は透析患者さんにおいての論文です.

マッチ前の患者背景では,やはりTAVR群のほうが高齢です(mean 75歳,SAVRでは64歳).でも今回はpropensity socre machingを使用.患者背景に有意差がなくなったところでの検証になっており,TAVRのほうがいいよね,という結果.

コストもTAVRの方が結果としては安くなっている.でも日本円で780万円….

外科的手術にするかカテーテルにするかは循環器内科に相談,といったところでしょうけど,こうした結果があるということを知っておくことは,紹介する側としては重要だと思います.

2017年11月20日月曜日

急性肝不全ではCRRTの方がIRRTよりも死亡率は下がる

Continuous renal replacement therapy is associated with reduced serum ammonia levels and mortality in acute liver failure

Hepatology. 2017 Aug 31.
[E-pub ahead of print]; https://doi-org.ezproxy.kyorin-u.ac.jp/10.1002/hep.29488

ABSTRACT
■Background
高アンモニア血症は,急性肝不全患者(ALF)における頭蓋内圧の亢進と死亡率に関連している.腎代替療法(RRT)が,アンモニア濃度と死亡率にどう影響するか検証した.
■Methods
US ALF Study Group registryを用い,1998年1月~2016年12月の患者を検証した.
まず最初に肝性脳症を呈した患者のアンモニアと,21日生存率(移植無し, TFS)の関連を調べた.続いて,RRT導入後3日間のアンモニアと,21日TFSを調査した.
■Results
高アンモニア血症(合計1186名)は,Grade3-4の肝性脳症(HE),神経イベントでの死亡,更には全死亡率と関連していた(HE(116 vs. 83μmol/l) , and mortality at day 21 due to neurological (181 vs. 90μmol/l) and all causes (114 vs. 83μmol/l; P<0.001 for all))
340名の連日のアンモニアが検証でき,61名(18%)がCRRT,59名(17%)がIRRT,220名(65%)が最初の2日間は透析なし(no RRT)といった内訳であった.
 1-3日において,アンモニアの減少は CRRT 38%, IRRT 23%, noRRT 19%であった.
noRRTと比較してCRRTではアンモニアの減少は有意差があったが,IRRTでは有意差はなかった.
組み入れ時期,年齢,原因,疾患活動性を補正しても,CRRTでは全死亡率の改善(21日TFS)を認めた(odds ratio [OR], 0.47 [95% confidence interval (CI), 0.26-0.82]) .
一方で, IRRTでは死亡率が増加していた (OR, 1.68 [95%CI, 1.04-2.72]) .
■Conclusions
高アンモニア血症はGrade3-4の肝性脳症,21日TFSと関連していた.
また,CRRTではアンモニアと21日TFSの改善を認めた.
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急性肝不全におけるCRRTの有効性を検討した論文.
IRRTが死亡率を増やす結果になっています.
IRRT群のほうが重症なのかと思いきや,CRRT群のほうが昇圧剤の使用が多かったり(64% vs 51%, P=0.029), INRは延長していたり(3.2 vs 2.7 P=0.003),そういうわけではない様子.乳酸値はCRRT群のほうが低い(6.2 vs 7.9 P=0.025)けど,そこまで大きく影響するとも思えない.
IRRTの細かな設定が分からないので,日本で適応できるかどうかは微妙ですが,IRRTのほうがいいかもしれません.しっかりアンモニアが下がればいいのかもしれませんが.
*海外だとlow doseでも<35ml/kg/hrです.今までIRRT施行している患者さんで,そこまでのdoseで施行している症例に出会ったことがないです….日本の保険だと600-800ml/hrが限界で,それだと10ml/kg/hr~13ml/kg/hrになるので,日本での適応には慎重にならざるを得ません(日内会誌 103:1145~1152,2014)

2017年11月13日月曜日

ADPKDにおける,腎障害進行例でのトルバプタン(サムスカ®)の効果(REPRISE Trial)

Tolvaptan in Later-Stage Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease(REPRISE Trial)

N Engl J Med. 2017 Nov 4.

Abstract(一部抜粋)
■Background 
過去の論文では,腎障害が軽微(推定クレアチニンクリアランス≧60ml/min)なADPKD患者において,トルバプタンが腎容量の増加とGFRのの低下を遅くするという結果であった.しかし,同時にアミノトランスフェラーゼとビリルビンの上昇を認めていた.より腎障害の進行したADPKD患者において,トルバプタンの効果と安全性は分かっていない.
■Methods 
他施設ランダム化比較試験.
ランダム化の前に,8週間の導入期を設け,副作用などを確認した.
18-55歳でeGFR 25~65と,56-65歳でeGFR 25-44の患者,1370人がランダム化され12ヶ月の試験を行った.
プライマリーエンドポイントはeGFRのベースラインからの変化とし,安全性は毎月検証した.
■Results 
トルバプタン内服群で,eGFRの低下は-2.34(95% confidence interval [CI], -2.81 to -1.87)であり,プラセボ群では-3.61 (95% CI, -4.08 to -3.14)であった.(difference, 1.27 ml per minute per 1.73 m2; 95% CI, 0.86 to 1.68; P<0.001). 
アミノトランスフェラーゼの上昇(>上限の3倍)はトルバプタン群で681人中38人(5.6%)に認め,プラセボ群では685人中8人(1.2%)で認めた.トルバプタン内服中止によって正常に戻った.ビリルビンの上限の2倍以上の上昇は認めなかった.
■Conclusions 
トルバプタンは腎障害が進んだADPKD患者においても,12ヶ月間において,eGFRの低下を抑えられた.(Funded by Otsuka Pharmaceuticals and Otsuka Pharmaceutical Development and Commercialization; REPRISE ClinicalTrials.gov number, NCT02160145 .).
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ADPKDのトルバプタンに関する話題.
早期腎症だけでなく,ある程度進行していても効果がありそう,という結果.
日本では既にメジャーな治療薬になっていると感じますが,アメリカではまだ未承認なんですね.なのでphase3試験,ということです.

他に一般的な血圧管理や脂質管理などしかやれることがない以上,トルバプタンは必要ですね.

一方で,ADPKD患者における死因の大きな原因は,心臓(36%),感染症(24%),脳血管(12%)となっています(J Am Soc Nephrol. 1995 Jun;5(12):2048-56.)
脳血管の12%の内訳は,脳動脈瘤破裂が6%,脳出血が5%,脳梗塞が1%となっています.
トルバプタンのADPKDにおける,腎障害進行の抑制効果は検証されていますが,今後は心臓,脳動脈瘤破裂などのイベントをどのように抑えられるか,感染症は減るのか,というところが大事になってくるのではないかと感じます.