2018年12月10日月曜日

AKI発症後のACE阻害薬 or ARB使用は死亡率を減らすが,AKIや高カリウム血症での入院は増やす

Association of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor or Angiotensin Receptor Blocker Use With Outcomes After Acute Kidney Injury

JAMA Intern Med. 2018;178(12):1681-1690.

Abstract
■Importance  
AKIは死亡の長期的なリスクである.しかし,AKI患者における長期予後を改善する効果的な戦略は分かっていない.
■Objective  
退院後のACE阻害薬もしくはARBの使用がAKIの予後に関連するか調べた
■Design, Setting, and Participants  
後ろ向きコホート研究.
2008年7月1日~2015年3月31日まで,カナダのアルバータ州において,AKIのエピソードがあった患者46253人を対象に解析した.追跡期間は最短で2年であった.
■Exposures  
退院後6ヶ月以内にACE阻害薬もしくはARBを使用.
■Main Outcomes and Measures  
一次アウトカムは死亡率.
二次アウトカムは腎臓が原因の入院(心不全,腎不全,高カリウム血症など),ESRDと,ESRDと血清Cr>2倍の持続の複合とした.
AKIの定義は,入院前CrとピークのCrを比較し50%以上の上昇があった場合とした.
Propensity scoreを用て患者背景をそろえた.
■Results  
46253人を組み入れた. (mean [SD] age, 68.6 [16.4] years; 24 436 [52.8%] male). 
退院後6ヶ月以内に22193人(48%)がACE阻害薬もしくはARBを処方されていた.
併存疾患や合併症など(入院前のACE/ARB使用,年齢や性別,ベースラインの腎機能,入院に関連するその他の要因,ヘルスケアサービス)で調整し,ACE阻害薬もしくはARBの使用でAKI発症2年後の死亡率改善を認めた. (adjusted hazard ratio, 0.85; 95% CI, 0.81-0.89). 
だがしかし,ACE阻害薬もしくはARBを内服している群では,腎臓が原因の入院が増えた. (adjusted hazard ratio, 1.28; 95% CI, 1.12-1.46).
ACE阻害薬もしくはARBの使用とESRDへの進展に関連はなかった.
■Conclusion and Relevance 
AKI患者において,ACE阻害薬もしくはARBの使用は,死亡率の低下と関連したが腎関連の入院を増やした.
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気づいたら12月です.今回はAKI後にRAS系阻害薬を使用すると死亡率が減ったよ,という内容.
一方で腎関連の入院,主に急性腎不全、うっ血性心不全、高カリウム血症による入院が増えているという結果でした.

ハードアウトカムである死亡率が減るなら,内服させてもいい気もします.
ただ今回supplementaryにはありますが,患者背景で差がないものの,糖尿病,高血圧,心不全の既往がある人が大多数を占めています.AKIのリスクなので当たり前っちゃあ当たり前なんですが,RAS系阻害薬を開始したindication(血圧なのか,蛋白尿が出現したのか)なども記載がなく,そもそもRAS系阻害薬を飲ませるべき患者層が多く含まれている可能性がありそうです.
まぁ蛋白尿がある人がそこまで多くない(GFR正常で蛋白尿のみでCKDに当てはまる人がRAS系阻害薬内服群とそうじゃない群で9.4% vs 7.7%)ので,蛋白尿がなくてもAKI発症した人にはRAS系阻害薬が効果的かも,とは言えるかもしれません.
また,入院前にRAS系阻害薬を内服していて,AKI発症後中止し,退院後も中止したままの患者では死亡率の上昇を認めている(HR, 1.23; 95% CI, 1.17-1.30)ので,出来るだけ再開したほうがよい,とは言えそうです.