2017年6月24日土曜日

ICU入室を要したsevere capillary leak syndromeの臨床像(全身性毛細血管漏出症候群)

The Clinical Picture of Severe Systemic Capillary-Leak Syndrome Episodes Requiring ICU Admission.

Crit Care Med. 2017 Jul;45(7):1216-1223.

Abstract
■OBJECTIVE
全身性毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome;以下CLS)とは,非常に稀な,循環血液減少性のショックを繰り返す病気である.
臨床像・検査所見・アウトカムを評価したデータは少なく,本論文ではICUでマネージメントを要したCLSの臨床像を示す.
■DESIGN, SETTING, PATIENTS:
他施設における後ろ向き研究である.1992年5月-2016年2月にヨーロッパのICUでのものである.
■MEASUREMENTS AND MAIN RESULTS:
37人の患者で,59のエピソードが生じ,今回の対象とした.
34人(91.9%)でモノクローナルなIgGの上昇があり,20人(58.8%)はκ軽鎖だった.
ICU入室時のHbは,中央値20.2g/dl(17.9-22g/dl)であり,蛋白は50g/L(36.5-58.5g/L)であった. 
IVIGが15エピソード(25.4%)で投与されていた.12エピソード(20.3%)でコンパートメント症候群を起こしていた.全患者の内,11人(18.6%)が死亡した.
37人の患者の最終エピソードで解析すると,SOFAスコア10以上 (オッズ比, 12.9 [95% CI, 1.2-140]; p = 0.04)であり,補液の総投与量が10.7L 以上(オッズ比, 16.8 [1.6-180]; p = 0.02) が,死亡の予測因子であった.
■CONCLUSIONS:
補液の総投与量が死亡と関連していた.IVIGは生存率を変えなかった.
-------------------------------------------------------------------------------------

kidney internationalに総説(以下review)が出ていた(http://dx.doi.org/10.1016/j.kint.2016.11.029)ので,その関連で.
本論文はICU入室を要したCapillary leak syndromeの患者の臨床像をまとめたもの.
補液が多いことはそれ自体がよくないみたい,という結論ですが,重症度を反映しているだけかもしれないですね.reviewではIVIGの有効性が示された報告があるという記載でしたが,本論文では特に予後に影響がなかったと.非常に稀な疾患なので,検出パワーが足りなかっただけかもしれないですね.

本当に簡単にreviewをまとめると,
・ Capillary leak syndromeは,蛋白質の血管透過性を亢進する種々の病気を示し,特発性全身性Capillary leak syndrome,Clarkson's病,卵巣過剰刺激症候群,血球貪食症候群,ウイルス性出血熱,自己免疫疾患,蛇咬傷,薬物,ゲムシタビンなどが引き起こす.
・ しかし診断として,多くの症例で血液培養陰性の敗血症とされたり,低アルブミン血症が原因だと考えられているかもしれない.
・ AKIはよく認める所見である.
・ 多くの患者はモノクローナルな蛋白上昇を血中に認める
・ 治療は体液管理が最も重要である.
・ 症例報告として,IVIG,テオフィリン,インフリキシマブといったものがある.
(*2017/09/24追記 IVIGが有効だったとする論文が出ました→Am J Med. 2017 Oct;130(10):1219.e19-1219.e27.)
・ ステロイドが奏功した報告もある(特に薬物が原因の場合)

なんだか分からないけれどショックを繰り返している患者,という臨床像なんでしょうか.

2017年6月20日火曜日

造影剤腎症のリスクのある成人に対して予防的輸液は不要か

Prophylactic hydration to protect renal function from intravascular iodinated contrast material in patients at high risk of contrast-induced nephropathy (AMACING): a prospective, randomised, phase 3, controlled, open-label, non-inferiority trial.

Lancet. 2017 Apr 1;389(10076):1312-1322.

Abstract(一部)
■BACKGROUND
生理食塩水の点滴は,造影剤腎症の予防においてガイドラインでも推奨されている.
しかしながら,臨床的な効果や費用対効果が,予防しない群と適切に比較し評価されているとは言えない.これらを評価する目的でAMCING trialを行った.
■METHODS
ランダム化前向き試験,オープンラベルであり,造影剤腎症の高リスクがある患者群での非劣勢を評価する.
18歳以上の造影剤が必要になる成人をランダム(1:1)に生理食塩水を投与する群と予防しない群に分けた.
eGFRが30未満の人,過去に透析を受けたことがある人などは除外した.
プライマリーアウトカムは造影剤使用後2-6日以内造影剤腎症の発症(ベースラインからCrが25%もしくは44μmol/L(0.5mg/dl)以上上昇)とし,また,予防しない場合との費用対効果も比較した.
Crの測定は造影剤投与直前,2-6日,そして26-35日後に行った.
intention-to-treatで行い,非劣勢マージンは2.1%とし,ClinicalTrials.govにも登録した.
■FINDINGS
2014年6月17日~2016年7月17日の期間で,660人が割り振られた.予防なしが332人,生理食塩水投与群が328人だった.2-6日のクレアチニンが評価出来たのは予防なしで92%,生理食塩水投与群で90%だった.造影剤腎症の発症は予防なしで2.6%,
生理食塩水投与群で2.7%で有意差はなかった.予防しない方がコストは抑えられた.35日の時点で透析になった人や死亡はいなかった.
■INTERPRETATION
予防なしでも,生理食塩水を投与した群と比較して,造影剤腎症の発症については非劣勢であり,コストは抑えられた.
-------------------------------------------------------------------------------------------

造影剤腎症の予防が必要かどうか評価した論文.
高リスク群として,
・ eGFR 45-59の場合は糖尿病もしくは,2つ以上のリスク( 年齢>75歳以上,貧血,心血管病の既往,NSAIDsもしくは利尿剤使用の使用)
・ eGFR 30-45
・ 多発性骨髄腫もしくはsmall chain proteinuriaを伴うリンパ形質細胞性リンパ腫
上記のいずれかと定義している.
eGFR 30未満が除外されていることには要注意.

また,本論文では入院患者が生理食塩水投与群9%,予防なしで8%と低い.
除外項目として救急で処置が必要な人やICU入室の人も除外されており,重症患者は考慮されていない可能性がある(そもそも重症なら造影剤腎症のリスクにかかわらず造影するよね,っていう指摘はごもっとも.)
また,BMIが共に28程度にも関わらず,造影剤の使用量の平均は共に90ml前後と少ない.日本の造影剤腎症のガイドラインでも引用されている報告(Clin J Am Soc Nephrol. 2008 Sep;3(5):1274-81.)では,100ml以下で造影剤腎症の発生頻度が低かったとしており,本研究では,そもそも造影剤腎症を起こしにくいセッティングだった可能性がある.(Lancetの論文は低浸透圧造影剤で,Clin J Am Soc Nephrolの論文は等浸透圧~低浸透圧だが,そもそも低浸透圧が等浸透圧に比べて明らかに優れているかどうかは明確な答えがない)

上記を考えると,eGFR 30以上の場合,造影剤の量が少量で済むなら予防は必要ないのかもしれない,と考えられると思う.
ただ,完全に個人的な印象として,造影CTならばeGFR 40以上あれば,特に予防しなくても大丈夫な印象です.

2017.07.31追記
Lancetにこの論文に関するCorrespondenceも出ています.
こちらの記事に参照.

2017年6月19日月曜日

抗菌薬(アモキシシリン/クラブラン酸,商品名オーグメンチン®)の血液透析における影響

Impact of high-flux haemodialysis on the probability of target attainment for oral amoxicillin/clavulanic acid combination therapy

International Journal of Antimicrobial Agents, 2017-07-01, Volume 50, Issue 1, Pages 110-113

■Abstract(一部)
アモキシシリン/クラブラン酸のような小分子のクリアランスは血液透析では増加していることが予想され,それにより血中濃度の低下を起こし,効果が減るかもしれない.
判明している薬物動態的パラメーターを使用し,アモキシシリン/クラブラン酸の血中濃度をシュミレーションした.アモキシシリンはMICを超えている時間が50%超えていることを有効とし,クラブラン酸は0.1mg/Lを超えている時間が45%以上で有効と判断した.
抗菌薬は10日間の投与を想定し,1000人の仮想患者でシュミレーションを行った.
7通りの抗菌薬投与・透析の方法を設定(アモキシシリン825mg/クラブラン酸125mg1日1回投与で投与2時間後に透析を行ったもの(午前透析)と,8時間後に透析を行ったもの(午後透析).アモキシシリン500mg/クラブラン酸125mgを1日2回内服で午前透析を行ったもの,午後透析を行ったもの,朝の内服は午前透析後に内服したもの,朝の内服は午前透析に行ったが夕分の内服を忘れたもの,朝の内服を忘れたもの).
アモキシリン500mg/クラブラン酸125mgを1日2回投与する群では透析しても有効と考えられた.
アモキシシリン825mg/クラブラン酸125mgを1日1回投与では,アモキシシリンは有効と考えられたが,クラブラン酸は有効とは言えなかった.
これらの結果から,アモキシシリン/クラブラン酸1日1回投与では,特に透析日に,有効な濃度が得られていない可能性が示された.
-----------------------------------------------------------------------------------------

抗菌薬と血液透析の濃度を調べた研究.シュミレーションですが.
ユニークだと思ったのは,わざわざ「夕分の内服を飲み忘れた」レジメンまで考慮していること.実際,飲み忘れそうですよね・・・.

レジメンを改めて整理すると
内服2時間後の透析→午前透析(本文中はmorning dialysis)
内服8時間後の透析→午後透析(本文中はafternoon dialysis)とした上で,
①アモキシシリン825mg/クラブラン酸125mg1日1回 朝投与
A.午後透析
B.午前透析
②アモキシシリン500mg/クラブラン酸125mg1日2回 朝夜投与
C.午後透析
D.午前透析
E.朝分の内服は午前透析後に内服
F.朝分の内服は午前透析後に内服するが,夜は内服忘れ
G.透析日の朝は内服忘れ

上記の7つに分類して,AとBではクラブラン酸の濃度が低く有効ではなかったと判断されています.
C-Gは,Gのみクラブラン酸の濃度が保てなかったとされており,A-Gいずれもアモキシシリンはほぼ有効だったとされています.

抗菌薬ハンドブックのサンフォードの記載ではアモキシシリン500mg/クラブラン酸125mgを1日1回投与だけど,血液透析日は透析後に追加内服することと記載があって,これに従えば問題はなさそう.
日本の投与量(オーグメンチン250®を1日2回)ではデータがなくもしかしたら有効濃度には達しないかもしれない.(体格が小さいから減量しても平気?明確なデータはないと思いますが・・・)
日本にはオーグメンチン250®,オーグメンチン125®がありますが,それぞれ配合比率がアモキシシリン250mg/クラブラン酸125mg, 125mg/62.5mgなので要注意です.
(配合比率を気にして,サワシリン®を追加して処方する人も多いです)

2017年6月18日日曜日

PPIはCKD進行のリスクとなる

Association Between Proton Pump Inhibitor Use and Risk of Progression of Chronic Kidney Disease

Gasteroenterology (article in press)
http://dx.doi.org/10.1053/j.gastro.2017.05.046

■Background & Aims
プロトンポンプインヒビター(PPI)はAKIと関連が示唆されており,また,近年CKDの危険因子でもあるという報告がある
■Methods
後ろ向きにストックホルム市民のデータベース(2007-2010年)を用いて解析を行った.
新規PPI内服者105305人,新規H2blockers(H2B)9578人おり,プライマリーアウトカムとしてCKD進行(Cr2倍以上の悪化,もしくはeGFR30%以上の低下),セカンダリーアウトカムをESRDとAKIとして解析を行った.
■Results
PPI服用者は,H2B服用者と比べて,Cr上昇の危険性があり(1985 events; adjusted hazard ratio [HR], 1.26; 95% CI, 1.05–1.51),eGFR30%以上の低下も認めた(11045 events; 1.26; 95% CI, 1.16–1.36). 
PPI服用は,ESRDの進展とも関連した (HR, 2.40; 0.76–7.58) and AKI (HR, 1.30; 95% CI, 1.00–1.69). 
また,PPIの累積はCKD進行と関連したが,H2Bの累積とは関連なかった.
■Conclusions
PPIの開始と累積はCKD進行のリスクを増す.
しかし交絡因子がある可能性は残る.
-----------------------------------------------------------------------------------
PPIとCKDの関連を調べた論文.
PPIは逆流性食道炎や潰瘍性病変で頻繁に処方されるものの,近年,肺炎,CD infection,骨粗鬆症などを悪化させるという報告が相次いでいる.
CKDにも悪そうというのが本論文の内容.ただ最後に「cannot exclude residual confounding」とあるのが実際のところだと思います.
この研究では年齢は比較的若い(平均で50歳台半ば)ですが,高齢者に限ればアスピリン内服とPPIは有用とする報告もあったりして(the lancet, http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(17)30770-5),要は適応をしっかり考えましょうってことですね.
それかどうしても処方するならH2ブロッカーのほうがいいかも.
少なくともpolypharmacyだからという理由での処方はやめたほうがいい.
(そもそもpolypharmacyが・・・)

2017年6月13日火曜日

eGFR・蛋白尿と癌の関連.

Kidney Function, Proteinuria, and Cancer Incidence: The Korean Heart Study

AJKD article in pressより
http://www.ajkd.org/article/S0272-6386(17)30636-4/pdf

■Background
eGFRと癌のリスクの関連はまだ分かっておらず,蛋白尿と癌の関連も同様である.
今回,前向きコホートで検証を行った.
■Setting & Participants
242,583 人 (30-74歳)の開始時に癌と診断されていない人たちを,1996-2004年から,2012年までフォローした. 
■Predictors
eGFR (≥90, 60-89, 45-59, and <45 mL/min/1.73 m2) と,蛋白尿の定性(undetectable/trace, 1+, 2+, and ≥3+).
■Outcomes
癌の発生
■Results
15,165人が癌を発症した.
eGFRと癌の発生はJ字型を示し,eGFR 45-59で一番低く,eGFR<45の場合全ての悪性腫瘍でリスクがeGFR>90と比べて44%増えた (HR, 1.44; 95% CI, 1.11-1.87).
蛋白尿は定性の程度によって癌発生との相関を見せた. (HRs of 1.24 [95% CI, 1.13-1.35], 1.38 [95% CI, 1.17-1.63], and 1.66 [95% CI, 1.30-2.12] for 1+, 2+, and ≥3+ vs undetectable/trace). 
eGFR<45は,45以上と比較して,腎・尿路系の癌,多発性骨髄腫,白血病が多かった.
蛋白尿は幅広い癌と関連があった(例えば胃,直腸,肝,肺,卵巣,腎,膀胱,多発性骨髄腫)
3年以下のフォローアップを除外すると,eGFRと腎癌・多発性骨髄腫,直腸癌・肝癌・肺癌・卵巣癌と蛋白尿の関連は保たれたままだった.
■Conclusions
特に,蛋白尿と癌の関連が認められた.
------------------------------------------------------------------------
本文はまだ読めてないですが,eGFRもしくは蛋白尿と癌発生の関連を調べた論文.
特に高度腎機能低下例で腎癌と尿路系の癌,多発性骨髄腫が多いことは他の論文でも示されていたと思うけど,蛋白尿はどうだったかな.
何かとニュースを賑わせる,お隣韓国からの報告なので,人種的には参考に出来るかもしれないですね.だからといって蛋白尿が3+だから癌のスクリーニングを積極的にしましょう!とはなりませんけど.どうせならg/gCrで評価して欲しかった.

2017年6月8日木曜日

リン吸着薬について

クエン酸第二鉄が貧血に有用という記事(2017.06.04)があったので再度見直してみました.
一番わかりやすいのは日本透析医学会のCKD-MBDガイドライン(透析会誌 45 :301〜356,2012)の表かもしれない.

しかし個々の薬剤についての言及は少なく,Caが高い場合やPTHが高い場合にはCa含有製剤は控えるとの記載がある.(シナカルセトの記載はあるが本稿では割愛する)
KDIGOのCKD-MBDガイドラインでは,「These studies showed that all medications currently used as phosphate binders (calcium salts, aluminum salts, magnesium salts, sevelamer-HCl, and lanthanum carbonate) are effective in lowering serum phosphorus levels.」とあり,いずれの薬剤でもよいとしている.
→2017.07追記.CKD-MBDガイドラインがup dateされ,Ca含有薬については制限したほうがよいかもという記載
また,KDIGOのガイドライン中には,セベラマーがCa含有薬に比較して石灰化の抑制を認めたという報告も挙げているが,近年のRCTでは異なる結果も出ており,しかも石灰化の沈着抑制が例えば炭酸ランタンでも見られるかは不明であるとか,そもそもハードアウトカムに影響するのかは分かっていないと記載している.

ちなみに日本で現時点で採用あるのは下記のようになっている.

一般名
商品名
値段
Ca含有
クエン酸第二鉄水和物リオナ錠84.8円×
ビキサロマーキックリン
顆粒86.2%:102円
カプセル250mg:30.5円
×
スクロオキシ水酸化鉄ピートルチュアブル錠
250mg:182円
500mg:267円
×
セベラマー塩酸塩レナジェル錠250mg:30円×

フォスブロック錠250mg:29.7円×
炭酸ランタン水和物
ホスレノールチュアブル錠
(顆粒もある)
250mg:169円
500mg:249円
×
沈降炭酸カルシウム
カルタン細粒83%9.1円

カルタン錠(ODもある)
250mg:5.8円
500mg:6.3円

カルタレチン
250mg:5.6円
500mg:5.7円

2017年6月6日火曜日

非糖尿病CKD患者での血圧と腎障害進行

Association of Intensive Blood Pressure Control and Kidney Disease Progression in Nondiabetic Patients With Chronic Kidney Disease A Systematic Review and Meta-analysis

JAMA Intern Med. 2017;177(6):792-799.

Abstract
■Importance
非糖尿病性CKD患者において,至適血圧は議論が分かれている.
■Objective
積極的降圧群(<130/80mmHg)と通常群(<140/90mmHg)での比較を行った.
■Data Sources  Searches
PubMed, MEDLINE, Embase,Cochrane Libraryで2016年3月までの文献
■Main Outcomes and Measures
1年でのGFR低下,血清クレアチニン2倍,GFR 50%の低下,ESRD,全死亡率,複合腎アウトカムを評価した.
■Results
9つのRCTで8127人の患者を組み込み,フォローアップの中央値は3.3年であった.積極的降圧群と通常群で1年でのGFR低下 (mean difference, 0.07; 95% CI, −0.16 to 0.29 mL/min/1.73 m2/y), 血清クレアチニン2倍もしくは50%のGFR低下 (RR, 0.99; 95% CI, 0.76-1.29), ESRD (RR, 0.96; 95% CI, 0.78-1.18), 複合腎アウトカム(RR, 0.99; 95% CI, 0.81-1.21),全死亡率 (RR, 0.95; 95% CI, 0.66-1.37)において,いずれも統計学的有意差を認めなかった.黒人じゃない患者や,蛋白尿が高度の患者では積極的降圧群で腎障害の進行が抑えられる傾向にあった.
■Conclusions and Relevance 
通常群よりも降圧することでの腎保護作用は,非糖尿病性CKDの患者では,証明されなかった.しかし黒人じゃない場合や蛋白尿が多い場合は積極的降圧が利益があるかもしれない.
-------------------------------------------------------------------------------------------
JNC8(JAMA. 2014 Feb 5;311(5):507-20.)では非糖尿病性CKDでは<140/90mmHgを推奨していたり,KDIGO(2012)では蛋白尿(尿中アルブミン30mg/day以上)があれば<130/80mmHgを推奨している.
さて,SPRINT試験( N Engl J Med. 2015;373(22):2103-2116.)は記憶に新しいところで,sBP<140と比較してsBP<120で有意に心血管イベントが抑制された.しかし腎臓に限って言えば,GFRの低下に有意差はなく,むしろsBP<120群でAKIが有意に増えているという結果でした.
このメタアナリシスでは有意差を認めていないものの,副作用も有意差を認めておらず,やはり蛋白尿が出ている群では<130/80mmHgを目指すことに問題はなさそう.ただしフォローアップ期間が3.3年であり,長期予後にどう影響するかは気になるところ.

2017年6月5日月曜日

発熱のないseptic shock疑いの患者では抗菌薬投与が少なく死亡率が増える

The Absence of Fever Is Associated With Higher Mortality and Decreased Antibiotic and IV Fluid Administration in Emergency Department Patients With Suspected Septic Shock

Critical Care Medicine: June 2017 - Volume 45 - Issue 6 - p e575–e582

【概要】
Objective: 発熱のないseptic shock患者では輸血量は少なく,抗菌薬も投与されず,院内死亡率が高くなる
Design: 前向き,観察研究,単施設
Patients: 2012年11月11日~2013年9月23日において,18歳以上,かつ①~③のいずれかを満たす患者を対象にした.①1L輸液投与後でも収縮期血圧90未満,②昇圧剤の使用,③収縮期血圧90未満だが輸液過多の可能性の為輸液制限している場合.発熱は自己申告があった場合もしくは100.4F(38℃)以上と定義した.
Measurements and Main Results: 378人中207人が発熱していた.発熱していない患者は,発熱患者と比較しERでの抗菌薬投与の割合が低く (81% vs 94%; p < 0.01),輸液量も少なく (2,607 vs 3,013 mL; p < 0.01), 院内死亡率も高かった (33% vs 11%; p < 0.01).
-----------------------------------------------------------------------
腎臓内科医を志しているものの,やはり感染症は大事です.
今回のstudyでは透析患者も除外されていません.
発熱の有無=感染症の有無ではない,と初期研修医には教えていますが,やはり熱だけでなく全体的な印象が大事なんでしょうね.
今回の論文だとショックバイタルだから,重症度を考慮して培養採取しておけば広域抗菌薬を投与しておく,という選択肢もありかもしれませんが.

2017年6月4日日曜日

エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)に腎保護作用がある?

Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes

N Engl J Med 2016;375:323-34.

【概略】
糖尿病患者では心血管イベントや腎機能悪化が問題となる.EMPA-REG OUTCOME試験では心血管イベントに対してのエンパグリフロジンの有効性を認めたが,微小血管障害として腎臓ではどうか検証した.
エンパグリフロジンとプラセボの割り付けで,腎機能悪化は,前者で12.7%,後者で18.8%で有意差を認めた(p<0.001)
よって,結論として,エンパフリグロジンは腎機能悪化の抑制を示した.
----------------------------------------------
今流行しているSGLT2阻害薬に関する論文.
何やら心不全に有用だったりとか,いろんな報告がされているが,腎臓にも有用だとしている.新しい薬なのにここまで推されると何やら不安になる.
EMPA-PEG OUTCOME試験では,コントロール群のA1cがずっと8%超えていたので,単純にA1cのコントロールが悪い事が腎機能の悪化に寄与したのでは?と思ってしまうが….
今後の動向に注目しておく.

クエン酸第二鉄の鉄欠乏性貧血に対する効果

Effects of Ferric Citrate in Patients with Nondialysis-Dependent CKD and Iron Deficiency Anemia

J Am Soc Nephrol 28: 1851–1858, 2017.


【概略】
鉄欠乏性貧血は非透析CKD患者においてコモンなものである.経口による鉄剤の内服は副作用や忍容性から問題なることがあり,静注も様々な危険性が指摘されている.
我々は非透析CKDかつ鉄欠乏性貧血患者での二重盲検化によるランダム化試験を行い,クエン酸第2鉄の効果と安全性の評価を行った.介入群117名,プラセボ群115名で,プライマリーエンドポイントは16週間におけるHb 1g/dl以上の上昇とし,介入群61(52.1%)とプラセボ群22(19.1%)で有意差を認めた(P,0.001).重篤な副作用は差がなく,下痢,便秘を主に認めた.
---------------------------------------------------------------
クエン酸第二鉄(リオナ®)の貧血に対する効果を調べた論文.
患者背景に違いはなく,CKD satge 3-4がどちらも約8割を占める.
患者の除外基準として4週間以内のESA製剤の使用や輸血,鉄剤の使用などがあり,純粋に介入群の効果をみているように見える.ただ介入群・プラセボ共に開始の時点でリンのコントロールがいい(4.23 vs 4.21)ので,果たしてこの状況でクエン酸第2鉄を使用する意義があるのだろうか….別にクエン酸第1鉄でいい気もしてしまう.
ただ,透析患者でリンの管理が難しくて貧血もあってpolypharmacyになりがちな時には有用かも.