tag:blogger.com,1999:blog-17422333176795836872024-03-05T13:00:58.901+09:00腎臓内科医を志して腎臓内科を志す後期研修医のブログ.
日々の勉強記録であり,内容については必ず元文献を参照しご自身でも吟味してください.kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.comBlogger39125tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-73242404726540051902019-02-18T10:23:00.002+09:002019-02-18T10:23:55.271+09:00血液透析患者でも果実・野菜の摂取は死亡率を下げる<h2>
Fruit and Vegetable Intake and Mortality in Adults undergoing Maintenance Hemodialysis</h2>
Clin J Am Soc Nephrol 14 2019.<br />
doi:https://doi.org/10.2215/CJN.08580718<br />
<br />
Abstract<br />
■Background and objectives<br />
一般的に,果実や野菜の摂取は心血管系疾患のリスクや全死亡を低下させる.<br />
血液透析患者では高カリウム血症の危険から果実や野菜は控えることが多く,摂取により同様のリスク軽減を認めるかどうかは分かっていない.<br />
血液透析患者でも同様の効果があるかどうかを検証した.<br />
■Design, setting, participants, & measurements<br />
果実や野菜の摂取はthe Global Allergy and Asthma European Network food frequency questionnaireで調査し, 血液透析患者の死亡と入院について調査した.<br />
9757名の成人患者において,8078名(83%)に対して食事のデータを解析出来た.<br />
果実と野菜の摂取と全死亡,心血管系,非心血管系の死亡について調べた.<br />
■Results<br />
2.7年で,2082名が死亡した(954名は心血管系が原因)<br />
果実,野菜接取の中央値は8/週(4-14)であった.<br />
低摂取(0–5.5, median 2)と比較して,全死亡のハザード比は中摂取(5.6–10,<br />
median 8)と高摂取(.10, median 17)で,それぞれ 0.90 (95% CI, 0.81 to 1.00) と0.80 (95% CI, 0.71 to 0.91) であった.<br />
非心血管系死亡は0.88 (95% CI, 0.76 to 1.02) と0.77 (95% CI, 0.66 to 0.91) であり,心血管系死亡は0.95 (95% CI, 0.81 to 1.11) と0.84 (95% CI, 0.70 to 1.00) であった.<br />
■Conclusions<br />
血液透析患者において果実と野菜の摂取量は少なく,摂取量が多いことが全死亡と非心血管系の死亡の減少と関連していた.<br />
-------------------------------------------<br />
<br />
血液透析患者における果実と野菜の摂取と死亡に関連する論文.<br />
<br />
血液透析患者は,尿が少ないor出ないため高カリウム血症がしばしば問題になる.<br />
また,心機能低下を合併することも多く,その治療でRAS系阻害薬を内服していることも多い.<br />
高カリウム血症は致死的な不整脈を引き起こすため,血液透析患者では生果実・生野菜を食べることを控えるよう指導ことが多い.<br />
<br />
本論文では高カリウム血症の頻度の記載がなく,また,血中カリウムの動態に影響を与えうるβブロッカー,RAS系阻害薬,利尿薬,インスリン使用などについての記載がなかったのでこれらを内服・使用している患者において,果実・野菜摂取による高カリウム血症の不利益に勝るかどうかは判断できないと思う.<br />
<br />
ただし,血液透析以外に高カリウム血症になる要因が乏しければ,高カリウム血症にならないよう慎重に摂取量を増やすのはありかもしれない.<br />
血液透析患者でも尿が出ている人,たまにいますからね….kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-91838804513540738022018-12-10T15:20:00.000+09:002018-12-10T15:27:16.044+09:00AKI発症後のACE阻害薬 or ARB使用は死亡率を減らすが,AKIや高カリウム血症での入院は増やす<h2 style="box-sizing: inherit; color: #333333; font-family: "guardian textsans web", "helvetica neue", helvetica, arial, sans-serif; line-height: 1.3; margin-bottom: 0.35em; margin-top: 0.2em;">
<span style="font-size: large;">
Association of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor or Angiotensin Receptor Blocker Use With Outcomes After Acute Kidney Injury</span></h2>
<div>
JAMA Intern Med. 2018;178(12):1681-1690.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
Abstract</div>
<div>
■Importance </div>
<div>
AKIは死亡の長期的なリスクである.しかし,AKI患者における長期予後を改善する効果的な戦略は分かっていない.</div>
<div>
■Objective </div>
<div>
退院後のACE阻害薬もしくはARBの使用がAKIの予後に関連するか調べた</div>
<div>
■Design, Setting, and Participants </div>
<div>
後ろ向きコホート研究.</div>
<div>
2008年7月1日~2015年3月31日まで,カナダのアルバータ州において,AKIのエピソードがあった患者46253人を対象に解析した.追跡期間は最短で2年であった.</div>
<div>
■Exposures </div>
<div>
退院後6ヶ月以内にACE阻害薬もしくはARBを使用.</div>
<div>
■Main Outcomes and Measures </div>
<div>
一次アウトカムは死亡率.</div>
<div>
二次アウトカムは腎臓が原因の入院(心不全,腎不全,高カリウム血症など),ESRDと,ESRDと血清Cr>2倍の持続の複合とした.</div>
<div>
AKIの定義は,入院前CrとピークのCrを比較し50%以上の上昇があった場合とした.</div>
<div>
Propensity scoreを用て患者背景をそろえた.</div>
<div>
■Results </div>
<div>
46253人を組み入れた. (mean [SD] age, 68.6 [16.4] years; 24 436 [52.8%] male). </div>
<div>
退院後6ヶ月以内に22193人(48%)がACE阻害薬もしくはARBを処方されていた.</div>
<div>
併存疾患や合併症など(入院前のACE/ARB使用,年齢や性別,ベースラインの腎機能,入院に関連するその他の要因,ヘルスケアサービス)で調整し,ACE阻害薬もしくはARBの使用でAKI発症2年後の死亡率改善を認めた. (adjusted hazard ratio, 0.85; 95% CI, 0.81-0.89). </div>
<div>
だがしかし,ACE阻害薬もしくはARBを内服している群では,腎臓が原因の入院が増えた. (adjusted hazard ratio, 1.28; 95% CI, 1.12-1.46).</div>
<div>
ACE阻害薬もしくはARBの使用とESRDへの進展に関連はなかった.</div>
<div>
■Conclusion and Relevance </div>
<div>
AKI患者において,ACE阻害薬もしくはARBの使用は,死亡率の低下と関連したが腎関連の入院を増やした.</div>
</div>
<div>
-------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
気づいたら12月です.今回はAKI後にRAS系阻害薬を使用すると死亡率が減ったよ,という内容.</div>
<div>
一方で腎関連の入院,主に急性腎不全、うっ血性心不全、高カリウム血症による入院が増えているという結果でした.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
ハードアウトカムである死亡率が減るなら,内服させてもいい気もします.</div>
<div>
ただ今回supplementaryにはありますが,患者背景で差がないものの,糖尿病,高血圧,心不全の既往がある人が大多数を占めています.AKIのリスクなので当たり前っちゃあ当たり前なんですが,RAS系阻害薬を開始したindication(血圧なのか,蛋白尿が出現したのか)なども記載がなく,そもそもRAS系阻害薬を飲ませるべき患者層が多く含まれている可能性がありそうです.</div>
<div>
まぁ蛋白尿がある人がそこまで多くない(GFR正常で蛋白尿のみでCKDに当てはまる人がRAS系阻害薬内服群とそうじゃない群で9.4% vs 7.7%)ので,蛋白尿がなくてもAKI発症した人にはRAS系阻害薬が効果的かも,とは言えるかもしれません.<br />
また,入院前にRAS系阻害薬を内服していて,AKI発症後中止し,退院後も中止したままの患者では死亡率の上昇を認めている(HR, 1.23; 95% CI, 1.17-1.30)ので,出来るだけ再開したほうがよい,とは言えそうです.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-65393052425547752352018-10-12T20:44:00.000+09:002018-10-12T20:51:50.600+09:00重症患者でもPMXは28日死亡率を改善せず(EUPHRATES trial)<h2>
Effect of Targeted Polymyxin B Hemoperfusion on 28-Day Mortality in Patients With Septic Shock and Elevated Endotoxin Level<br />The EUPHRATES Randomized Clinical Trial</h2>
<div>
JAMA. 2018;320(14):1455-1463.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
Abstract</div>
<div>
■Importance </div>
<div>
Polymyxin B hemoperfusion(PMX-HP)は敗血症での血中エンドトキシン値を下げる.</div>
<div>
エンドトキシンはすぐに測定できる.エンドトキシンが上昇した敗血症患者において,PMX-HPは患者の予後を改善するかもしれない.</div>
<div>
■Objective </div>
<div>
エンドトキシン高値の敗血症性ショックの患者に対し,通常の治療に加えPMX-HPを行うかどうかで生存率の改善が得られるかどうか調べた</div>
<div>
■Design, Setting, and Participants </div>
<div>
55個所の他施設RCTで,2010年9月~2016年6月の450名(エンドトキシン0.6以上かつ敗血症性ショック)が組み込まれた.</div>
<div>
■Interventions </div>
<div>
PMX-HP 224名と,対照群(疑似的にhemoperfusionを施行)226名の比較.</div>
<div>
■Main Outcomes and Measures </div>
<div>
主要評価項目は全患者とMODS 9点以上の患者における28日死亡率.</div>
<div>
■Results </div>
<div>
450名組み込まれ, (mean age, 59.8 years; 177 [39.3%] women; mean APACHE II score 29.4 [range, 0-71 with higher scores indicating greater severity), 449名 (99.8%) が完遂された. </div>
<div>
PMX-HPは28日死亡率において差を認めなかった (treatment group, 84 of 223 [37.7%] vs sham group 78 of 226 [34.5%]; risk difference [RD], 3.2%; 95% CI, −5.7% to 12.0%; relative risk [RR], 1.09; 95% CI, 0.85-1.39; P = .49)</div>
<div>
また,MODS 9点以上の患者でも差を認めなかった(treatment group, 65 of 146 [44.5%] vs sham, 65 of 148 [43.9%]; RD, 0.6%; 95% CI, −10.8% to 11.9%; RR, 1.01; 95% CI, 0.78-1.31; P = .92).</div>
<div>
全体で264の有害事象が生じた (65.1% treatment group vs 57.3% sham group). </div>
<div>
最も多い有害事象は敗血症(ショック含む)の悪化 だった.</div>
<div>
■Conclusions and Relevance </div>
<div>
PMX-HPは従来治療に上乗せしても28日死亡率を改善しなかった</div>
</div>
<div>
--------------------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
さて,おそらく決定打になるであろうPMXのRCTです.</div>
<div>
重症患者に絞っても死亡率の改善はなし.</div>
<div>
今までのプラクティスを変えないですが,更なる裏付けになる材料です.</div>
<div>
これから先,国内でPMXを推奨するには国内での他施設RCTが必要になると思いますが,はたして施行されるんでしょうか?(ハードルがかなり高い気がします)</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-83623630987789489972018-08-28T19:11:00.003+09:002018-08-28T19:19:45.908+09:00【Pro and Con(賛成と反対)】慢性腎不全における食事療法<h2>
【Pro and Con(賛成と反対)】慢性腎不全における食事療法</h2>
<h3>
Pro: The rationale for dietary therapy for patients with advanced chronic kidney disease</h3>
<div>
Nephrology Dialysis Transplantation, Volume 33, Issue 3, 1 March 2018, Pages 373–378,</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
■Abstract(抜粋)</div>
<div>
食事療法は腎代替療法に近づいているCKD患者に多くの利益をもたらす.</div>
<div>
これらの利益の多くは,食事がCKD進行を遅らせるかどうかとは独立している.</div>
<div>
食事療法は低蛋白質,ミネラル,そして適切なエネルギー摂取である.</div>
<div>
食事療法により,潜在的に毒性をもつ代謝産物の蓄積が減り,体内水分,塩分,カリウム,リン,カルシウムなどの多くのミネラルバランスが健康に保たれ,栄養障害(protein-energy wasting;PEW)を防ぎ,改善するだろう.</div>
<div>
また,食事療法により安全に腎代替療法の開始を遅らせることが出来るだろう.</div>
<div>
透析開始に関するCKD患者の不安は,食事療法を受け入れ順守させることが出来るかもしれない.</div>
<div>
<br /></div>
</div>
<h3>
Con: The role of diet for people with advanced Stage 5 CKD</h3>
<div>
Nephrology Dialysis Transplantation, Volume 33, Issue 3, 1 March 2018, Pages 380–384,</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
■Abstract(抜粋)</div>
<div>
数十年にわたりCKD患者において蛋白制限が行われているが,それは未だ議論のあるものであり,臨床における適応においては多様である.</div>
<div>
利用できるエビデンスのバランスに基づき,様々なエキスパートが蛋白制限を論じている.一番大きなRCTはthe Modification of Diet in Renal Disease studyである.</div>
<div>
多くの解析があるが,主要評価項目であるGFRの低下については利益を示すことが出来なかった.多くの研究やメタアナリシスに批判があり,それは出版バイアスだったり,代替エンドポイントだったり,疑陽性を生じるものだったりする.</div>
<div>
また,以前の論文で認めた利益が,現在の標準治療(RAA系阻害薬による血圧管理など)を受けているCKD患者でも認めるかは不透明である.</div>
<div>
このように,低蛋白食がCKDの進行を抑えるかは分かっていない.</div>
<div>
日常診療で食事療法を適応するかは重大な疑問が存在している.慎重に研究対象の患者を選んだとしても,食事療法の順守は低い.</div>
</div>
<div>
-----------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
食事療法に対するpro,conがあったので紹介.</div>
<div>
今年出版されたCKD 2018 guidelineでも蛋白制限の有用性に言及はあるものの,画一的な指導は不適切,としています.</div>
<div>
個人的にはconの立場ですが,proの内容を読んでみて興味深いなと思ったのは,動物性蛋白よりもナッツなどの植物由来がいいのでは,という言及がされていたことです.</div>
<div>
カリウム,リンの問題でなかなか難しい面もあるとは思いますが,そういう見方もあるのだなと思いました.</div>
<div>
必要なら栄養指導もいいですが,その前に適切な血圧管理(蛋白尿出てるならRAA系阻害薬をしっかり使う)をすることや,喫煙指導のほうがメリットがあるかな,と思います.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-32191249741029939632018-08-20T10:30:00.001+09:002018-08-20T10:34:10.121+09:00腹膜透析と血液透析で認知機能に差が出るのか?<h2>
Peritoneal dialysis is associated with better cognitive function than hemodialysis over a one-year course.</h2>
<div>
Kidney Int. 2018 Feb;93(2):430-438. </div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
Abstract(一部)</div>
<div>
末期腎不全患者の認知機能低下は複雑な内服,食事療法,医学的な意思決定に影響を及ぼす.腎機能が低下するにつれ認知機能も低下する傾向にあるが,透析の開始で認知機能の改善を得たり,腎移植によって回復することさえ認める.</div>
<div>
しかしながら,治療法の違いによる認知機能の変化はほとんど知られていない.</div>
<div>
我々は,1年間の認知機能を,腹膜透析(以下PD)と血液透析(以下HD)で比較した.</div>
<div>
Trail Making Test-Bとd2-Revision-Testを用いて評価し,また,Kidney Disease Quality of Life Short Form Cognitive Function-subscaleを患者が記入した.</div>
<div>
271名が組み込まれ,ベースラインと1年後を評価した.</div>
<div>
HD患者96名,PD患者101名を,propensity scoreを用い,年齢,併存疾患,教育,雇用状況で調整した.</div>
<div>
PD患者はHD患者よりもベースライン,1年後共に良い結果であったが,群間の比較は困難であった.また,HD患者ではPD患者よりも脱落が多く,バイアスがかかる可能性があり一般化は難しい.</div>
<div>
------------------------------------------</div>
</div>
<div>
<br /></div>
<div>
PDとHDで認知機能障害に差が出るのか調べた論文.</div>
<div>
自分の翻訳能力の無さにびっくりしつつ,この論文で示されたことはPD,HDで単純に比較はできない事,1年間では差が出ない事,といったところ.</div>
<div>
分かりやすいのはこの図です.</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgbUJ5M6GbwEYhT0ruPaJcvpBfBxbGuE6TfflULwi26hL3qp5OsVZZnPcCTRxnyhizwhiyJLD8l-xcyHOcGJIXkmUFZhMlKLsBqBDm_o-en5ZDRl_eNfsm-2YtOv5xUZnnFBhbunOqLgaxH/s1600/PD+and+HD+CF.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="531" data-original-width="1372" height="247" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgbUJ5M6GbwEYhT0ruPaJcvpBfBxbGuE6TfflULwi26hL3qp5OsVZZnPcCTRxnyhizwhiyJLD8l-xcyHOcGJIXkmUFZhMlKLsBqBDm_o-en5ZDRl_eNfsm-2YtOv5xUZnnFBhbunOqLgaxH/s640/PD+and+HD+CF.jpg" width="640" /></a></div>
<div>
一番左は低いほど良好で,右2つは高いほど良好です.</div>
<div>
一番右のKDQOL-CFが問診票を使ったやつなんですが,PD患者では低い傾向です.</div>
<div>
まぁ臨床的に有意な差かどうか一年くらいではなんとも言えないですし,PD患者のほうがベースラインの認知機能がよいので認知機能の低下を実感しやすい(今まで出来てたものが出来なくなった実感が大きい)というのはあるかもしれません.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
さて,この論文に対するcommentaryも出ています(Kidney International (2018) 93, 306–308;)</div>
<div>
こちらも脱落の多さ,フォローアップ期間の短さは問題点に挙げています.</div>
<div>
同時にstudyの難しさについて言及されています.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
こういう分野は良質なエビデンスの構築が難しいですね.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-761675287456118282018-08-13T09:26:00.001+09:002018-08-13T09:59:04.298+09:00エボカルセト(オルケディア®)はシナカルセト(レグパラ®)に対して効果は非劣勢.消化器系の副作用を減らす傾向.<h2>
Head-to-head comparison of the new calcimimetic agent evocalcet with cinacalcet in Japanese hemodialysis patients with secondary hyperparathyroidism</h2>
<div>
kidney international 2018 Articles in Press</div>
<div>
<br /></div>
<div>
■abstract</div>
<div>
二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)は,心血管の石灰化を引き起こし,CKD患者の生存率や生活の質に影響を及ぼす.シナカルセトはSHPTの管理に用いられるが,副作用として消化器症状を引き起こし,内服アドヒアランスの低下の原因となる.それゆえに,より消化器症状の少ないカルシウム受容体作動薬が求められていた.</div>
<div>
本論文はphase3,ランダム化,二重盲検化,ダブルダミー法を用いてシナカルセトとエボカルセトの効果と安全性を比較した.<br />
SHPTの日本人透析患者をエボカルセト317人,シナカルセト317人にランダム化し,30週フォローした.<br />
主要有効性評価項目は,28-30週でのPTH 60-240pg/ml達成でエボカルセトのシナカルセトに対する非劣勢(非劣勢マージンは−15%, per protocol set analyses).<br />
エボカルセトでは72.7%,シナカルセトでは76.7%の患者が目標PTHに達した(between-group difference: −4.0% [95% confidence interval −11.4%, 3.5%], for non-inferiority).<br />
消化器系の副作用発生はエボカルセト18.6%,シナカルセト32.8%であった.(between-group difference: −14.2% [−20.9%, −7.5%], significant for superiority).<br />
以上より,エボカルセトのシナカルセトに対する目標PTHへの達成の非劣勢,ならびに,より消化器症状が少ないことが示された.<br />
-------------------------------------------------------<br />
<br />
透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療薬の比較.<br />
シナカルセトが登場してから手術の症例がかなり減った,というのは経験のある医師に教わりました.そんなシナカルセトは消化器症状が副作用として出やすいということがありますが,新治療薬であるエボカルセトは消化器症状を減らす,という結果になりました.<br />
あくまで主要有効性評価項目はPTH値に対する非劣勢であって,副作用の評価ではないということは留意すべきだとは思いますが,シナルセトは消化器系の副作用を訴える事も多く,その場合の選択肢になりそうです.<br />
ただし,消化器系の副作用として複合されていますが,それぞれをみると明らかに差があったのは嘔気と腹部違和感の2項目で,嘔吐・食欲低下・腹満感についてはエボカルセトが好ましい傾向であるものの,明らかな差は示せていません.<br />
このあたりは留意したほうがよさそうですね.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-80995561043602594462018-07-09T16:43:00.003+09:002018-07-09T16:43:54.741+09:00eGFR 30以上ならメトホルミンでの乳酸アシドーシスの頻度は変わらない<h2>
<span style="font-size: large;">Association of Metformin Use With Risk of Lactic Acidosis Across the Range of Kidney Function<br />A Community-Based Cohort Study</span></h2>
<div>
JAMA Intern Med. 2018;178(7):903-910.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
Abstract</div>
<div>
■Importance</div>
<div>
米国では約100万人の2型糖尿病かつCKD患者がおり,ガイドラインで推奨されているメトホルミンの投与がされていない.これは,CKD患者におけるアシドーシスの危険性が不確実であることを反映しているのかもしれない.</div>
<div>
■Objective </div>
<div>
eGFRの程度,推移に応じてメトホルミンの使用とアシドーシスによる入院の関係を調べた.</div>
<div>
■Design, Setting, and Participants </div>
<div>
Geisinger Health Systemにおける糖尿病患者75413人を2004年1月~2017年1月までのeGFRの経時的変化を用いて評価した.</div>
<div>
結果は67578人の新規メトホルミン使用者と,14439人の新規SU薬使用者を</div>
<div>
Geisinger Health Systemでの結果を、MarketScan databaseでの新規メトホルミン使用者67578人と新規SU薬使用者14439人で再度検討した.</div>
<div>
■Exposures </div>
<div>
Metformin use.</div>
<div>
■Main Outcomes and Measures </div>
<div>
アシドーシスによる入院</div>
<div>
■Results </div>
<div>
Geisinger Health Systemでの75413人は,平均年齢60.4歳で,51%が女性であった.</div>
<div>
2335人が中央値5.7年でアシドーシスにより入院していた(interquartile range, 2.5-9.9 years). </div>
<div>
他の血糖降下薬と比較して,長期のメトホルミン使用はアシドーシスの発生に関与せず(adjusted hazard ratio [HR], 0.98; 95% CI, 0.89-1.08),また,eGFR 45-50mL/min/1.73m2 (adjusted HR, 1.16; 95% CI, 0.95-1.41), eGFR 30-44 mL/min/1.73 m2(adjusted HR, 1.09; 95% CI, 0.83-1.44)でもアシドーシスの発生には関係なかった.</div>
<div>
一方で,eGFR 30mL/min/1.73m2未満はリスクが増えていた.(adjusted HR, 2.07; 95% CI, 1.33-3.22). </div>
<div>
結果は新規メトホルミン使用者と新規SU薬使用者を比較しても同様であった.</div>
<div>
■Conclusions and Relevance </div>
<div>
メトホルミン使用によるアシドーシスは,eGFR 30mL/min/1.73m2未満と関連があった.</div>
<div>
--------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
CKDとメトホルミンによるアシドーシスのstudy.</div>
<div>
日本の添付文書だと,中等度以上の腎機能障害には禁忌とあるが具体的な数値はなし.</div>
<div>
日本糖尿病学会のHPには,「eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合にはメトホルミンは禁忌である。eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする。」との記載あり(<a href="https://www.nittokyo.or.jp/modules/information/index.php?content_id=23" target="_blank">参照</a>)</div>
<div>
<br /></div>
<div>
メトホルミンは他の血糖降下薬と比較し心血管イベントの抑制などで有効性を示せており,現時点では糖尿病治療薬の第一選択である.</div>
<div>
第二選択薬については結論が出ていなかったが,2018年米国糖尿病学会の推奨が出た(Diabetes Care. 2018 Jan;41(Suppl 1):S73-S85.)</div>
<div>
心血管系の既往がある場合は,SGLT2阻害薬,GLP1作動薬が第二選択になり得るというものになっている.</div>
<div>
SGLT2阻害薬は利尿薬の側面もあり,脱水が起こる危険性がある.</div>
<div>
この場合,eGFR 30以上でもメトホルミン併用でアシドーシスのリスクが増えないか,という懸念が生じる.</div>
<div>
どちらも心血管イベント抑制に有効性が示せているだけに処方機会が今までよりも増えていくと思うが,個々の症例によって副作用のリスクを評価することは忘れない方がいいだろうと思われる.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-37316776781784471312018-06-25T21:02:00.001+09:002018-06-25T21:05:26.636+09:00腎機能低下時(透析含む)のDOAC<h2 style="background-color: white; border: 0px; clear: both; color: #2e2e2e; font-family: Arial, Helvetica, "Lucida Sans Unicode", "Microsoft Sans Serif", "Segoe UI Symbol", STIXGeneral, "Cambria Math", "Arial Unicode MS", sans-serif; font-size: 22px; font-weight: 400; line-height: 1.4; margin: 0px 0px 12px; padding: 0px; vertical-align: baseline;">
Chronic kidney disease and arrhythmias: highlights from a Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Controversies Conference</h2>
<div>
kidney international 2018 in press</div>
<div>
<br /></div>
<div>
(以下本文よりかなり意訳して抜粋)</div>
<div>
<div>
CKD患者は,心房細動などの不整脈を合併しやすい.</div>
<div>
だが,このような患者層は,歴史的に,臨床研究において取り上げられることが少ない.</div>
<div>
KDIGOではこのようなことを対象にカンファレンスを開催した.</div>
<div>
そのカンファレンスの要点に焦点を絞って報告する.</div>
</div>
<div>
-----------------------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
主に心房細動の抗凝固の内容がまとまっていて参考になります.</div>
<div>
本文を参照して欲しいのですが,あまりにもよくまとまっておいたので引用.</div>
<div>
<br /></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiJ-7hI40erPiWrg2w-ODjKZxlqIWbP3nmL8nj2VejquFWKe6l2YWYFyM2uo0wfA9m3xl-rcBpMuWZCRdcNftr5GJFX2BVckzhezmp0yukNi14NarJsKLFYyfz88Jqlh2VSNeAJAlaW1TZw/s1600/Image.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="290" data-original-width="1023" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiJ-7hI40erPiWrg2w-ODjKZxlqIWbP3nmL8nj2VejquFWKe6l2YWYFyM2uo0wfA9m3xl-rcBpMuWZCRdcNftr5GJFX2BVckzhezmp0yukNi14NarJsKLFYyfz88Jqlh2VSNeAJAlaW1TZw/s1600/Image.png" /></a></div>
<div>
<br /></div>
<div>
<a href="https://nephrologist-k.blogspot.com/2017/07/blog-post.html" target="_blank">以前の記事</a>で透析時のアピキサバンについて言及しましたが,この表でも取り上げられています.</div>
<div>
リバロキサバンも取り上げられていますが,いずれもデータ不十分には変わりありません.この表でのワーファリンの目標INRは日本透析学会推奨のINRとは異なりますので注意が必要ですね(日本透析学会は,ワーファリンを推奨していませんが,投与するならINR<2)</div>
<div>
<br /></div>
<div>
今後,この分野もデータが蓄積されていくんでしょうね.</div>
<div>
<br /></div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-80160193276428669732018-06-04T15:35:00.000+09:002018-06-04T16:16:30.631+09:00Clinical Question:クレメジン(Kremezin, AST-120)の効果とは?<h2>
■CQ:クレメジンの効果とは??</h2>
<br />
今回はClinical questionとして,尿毒症症状の改善と透析導入の遅延を謳っているクレメジンについてまとめます.<br />
<br />
添付文書には下記のように記載されている.<br />
禁忌:消化管に通過障害を有する患者(排泄に支障をきたす恐れがある)<br />
用量:<span style="background-color: white;">通常,成人に1日6gを3回に分割し,経口投与する.</span><br />
<span style="background-color: white;">慎重投与:</span><br />
<span style="background-color: white;">1. </span><span style="background-color: white;">消化管潰瘍,食道静脈瘤を有する患者(固体のまま消化管を通過するので,患部を刺激するおそれがある.)</span><br />
<div style="background-color: white;">
</div>
<div style="background-color: white;">
2. 便秘を起こしやすい患者(便秘を増悪するおそれがあり,また基礎疾患に肝障害を有する患者では血中アンモニア値の上昇があらわれることがある.)</div>
<div style="background-color: white;">
<br />
■日本ではどうか?<br />
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013より.<br />
’’球形吸着炭(AST‒120)は腎機能の指標を一部改善させ,CKD の進行を抑制させる可能性があるため,使用を考慮してもよい.(推奨グレードC1)’’<br />
ガイドラインで引用されている文献を参照する.<br />
CAP‒KD 試験(Am J Kidney Dis. 2009 Sep;54(3):459-67.)<br />
60人の保存期CKD患者(Cr 5.0未満)を対象とした試験で,通常通りの低蛋白食&降圧群と,それに加えてAST-120投与(6g/day)した群を1年比較したランダム化試験.<br />
プライマリーアウトカムは複合エンドポイントとして血清Cr,透析や移植,そして死亡を検討した.結果はプライマリーアウトカムでは有意差を認めなかった.<br />
ただし推定CCrの低下速度はAST-120投与群で緩やかであった(0.15 vs 0.12 mL/min/y; P=0.001)<br />
単施設からの報告(Ren Fail. 2008;30(9):856-60.)では,192人のCKD患者を検討し,AST-120投与群(101人)で透析導入時に血清クレアチニンが高く(AST-120 group, 8.2 ± 1.9; non-AST-120 group, 7.6 ± 2.1; p = 0.031),eGFRが低く(AST-120 group, 5.7 ± 1.7; non-AST-120 group, 6.9 ± 2.5; p < 0.001),また,5年生存率はAST-120投与群で有意に高かった(72.6% vs 52.6%, p=0.018).<br />
他の観察研究でも死亡や透析導入といったハードアウトカムに有効性は示せていないものの,AST‒120 により血清Cr
値に基づく腎機能の指標の推移が改善したという報告は多数みられるということで,エビデンスに基づくCKD診療ガイドラインでは上記の推奨になっている.</div>
<div style="background-color: white;">
<br />
■海外ではどうか?<br />
KDIGO Guideline 2012では言及なし(そもそも日本以外で採用されていないからでしょうか)<br />
文献的には,1年間でのRCTで腎機能低下(Cr, 透析,移植)に寄与しなかったものの,倦怠感は改善したという報告がある(Am J Kidney Dis. 2006 Apr;47(4):565-77.)<br />
規模の大きなRCTも存在する.<br />
EPPIC試験(J Am Soc Nephrol. 2015 Jul;26(7):1732-46.)は,欧米を中心に約2,000人の保存期CKD患者を対象に, AST-120(9g/day)投与群とプラセボ群について、イベント(透析導入、腎移植、血清クレアチニン値の倍加のいずれか)の発生を主要評価項目として行ったものであり,結果は有意差なしというものだった.副作用も両群で有意なものはなかった.</div>
<div style="background-color: white;">
<br />
■結論として<br />
思ったよりもエビデンスは乏しい.特に透析導入を遅らせるという確たる証拠はない.<br />
安全性は比較的高そうであるので,投与するとしたら,尿毒症症状が強い症例(特に倦怠感)には有効かもしれない.</div>
<br />
<dt style="background-color: white;"></dt>
<dt><br /></dt>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-72735274875892961042018-05-14T16:06:00.001+09:002018-05-14T16:57:46.873+09:00飲水量と腎機能の関係;飲水量増やしても,腎機能改善には寄与しない?<h2>
Effect of Coaching to Increase Water Intake on Kidney Function Decline in Adults With Chronic Kidney Disease<br />The CKD WIT Randomized Clinical Trial</h2>
<div>
<br /></div>
<div>
JAMA. 2018;319(18):1870-1879.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
<u>Abstract</u></div>
<div>
■Importance </div>
<div>
観察研究では,飲水量の増加は腎機能の改善と関連があるとされる</div>
<div>
■Objective </div>
<div>
飲水量を増やすように指導することが,成人のCKD患者における腎機能に影響するか調べた</div>
<div>
■Design, Setting, and Participants </div>
<div>
カナダのオンタリオ州における9施設で,ランダム化し,2013年~2017年5月25日まで,CKDG3かつ1日の尿量が3L未満の患者を対象にした.</div>
<div>
■Interventions </div>
<div>
316名に飲水励行し,315人の対照群は通常の飲水量を維持するよう指導した.</div>
<div>
■Main Outcomes and Measures </div>
<div>
Primary outcomeは12ヶ月後のeGFRの変化.</div>
<div>
Secondary outcomesは,12ヶ月後の,血清コペプチン濃度変化・クレアチニンクリアランス,24時間アルブミン尿,患者申告の健康度(最低が0, 最高が10)</div>
<div>
■Results </div>
<div>
631人がランダム化された(mean age, 65.0 years; men, 63.4%; mean eGFR, 43 mL/min/1.73 m2; median urine albumin, 123 mg/d)</div>
<div>
12名が死亡(飲水励行群:5名,対照群:7名).</div>
<div>
590名が12ヶ月フォローされ,飲水励行群では0.6L/dayの尿量増加を認めた(95% CI, 0.5 to 0.7; P < .001). </div>
<div>
eGFRの変化は飲水励行群で-2.2ml/min/1.73m2で,対照群で-1.9ml/min/1.73m2であった(adjusted between-group difference, −0.3 mL/min/1.73 m2 [95% CI, −1.8 to 1.2; P = .74]). </div>
<div>
Secondary outcomesは以下の通り.</div>
<div>
plasma copeptin, −2.2 pmol/L (95% CI, −3.9 to −0.5; P = .01)</div>
<div>
creatinine clearance, 3.6 mL/min/1.73 m2 (95% CI, 0.8 to 6.4; P = .01)</div>
<div>
urine albumin, 7 mg per day (95% CI, −4 to 51; P = .11)</div>
<div>
quality of health, 0.2 points (95% CI, −0.3 to 0.3; P = .22).</div>
<div>
■Conclusions and Relevance </div>
<div>
CKDG3では,飲水量の増加は12ヶ月後のeGFR低下に影響しなかった.</div>
<div>
--------------------------------------------------------------</div>
</div>
<div>
<br /></div>
<div>
飲水量の増加がeGFR低下を抑制するか,を調べた論文.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
患者背景が日本人と違いすぎるのは海外だから仕方ないとして,対照群も平均1.9L/day(患者体重より計算すると約0.9ml/kg/hr)の尿量です.介入群は2.5L/dayへ増加.</div>
<div>
つまり0.9ml/kg/hr以上に尿量を増やしてもあまり意味がない,ということですかね.</div>
<div>
0.5ml/kg/hrのぎりぎりだとどうなのか?ということは疑問点として残ります.</div>
<div>
あんまり日本人って飲水しない気がするんですよね.外来でもペットボトル500mlも飲まない人もいますし….これは完全に個人的な印象ですけど.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-12935140461517970142018-05-07T16:19:00.000+09:002018-05-07T16:20:06.686+09:00CKDG4-5における骨代謝マーカー<h2>
Diagnostic Accuracy of Biomarkers and Imaging for Bone Turnover in Renal Osteodystrophy</h2>
JASN May 2018 29: 1557-1565<br />
<br />
ABSTRACT<br />
■Background<br />
腎性骨形成異常症は進行したCKDでよく認めるが,その骨代謝状態は生検でのみ評価される(骨生検がゴールドスタンダード).我々は,骨代謝マーカーとhigh-resolution peripheral computed tomography (HR-pQCT) が骨代謝の状態を予測するか検討した.<br />
■Methods<br />
空腹時のCKDG4-5(透析含む)患者69名,対照者68名の血液でバイオマーカー (intact parathyroid hormone [iPTH], procollagen type 1 Nterminal
propeptide [PINP], bone alkaline phosphatase [bALP], collagen type 1 crosslinked C-telopeptide
[CTX], and tartrate-resistant acid phosphatase 5b [TRAP5b]) を測定し,また,HR-pQCTでの評価を行った.骨生検は43例のCKD患者で行った.<br />
■Results<br />
全てのマーカーはCKD患者で対照群より高値であった.<br />
低回転型骨代謝を区別するための areas under the receiver operating characteristic curve (AUCs)は,bALP 0.82, intactPINP 0.79, TRAP5b 0.8でiPTH 0.61と比較し良かった.<br />
高代謝回転型では,AUCsはiPTH 0.76で他のマーカーと同等であった.<br />
■Conclusions<br />
バイオマーカー(bALP, intact PINP, and TRAP5b)とHR-pQCTは低回転型骨代謝を区別するのに有用であった.<br />
iPTHは低回転型には有用ではなかったものの,高回転型骨代謝には他の骨代謝マーカーと同等に有用であった.<br />
-------------------------------------------------<br />
<br />
CKD-MBDでの骨代謝評価に関する論文.<br />
HR-pQCTは今回は取り上げません.<br />
<br />
一般に,CKD-MBDでの骨代謝に関しては,骨生検がゴールドスタンダード.しかし侵襲的であり滅多に行われない.<br />
iPTHは骨代謝に対して感度も特異度も低い.<br />
骨代謝のマーカーは様々なものがある.<br />
骨吸収マーカーとしてcollagen type 1 crosslinked C-telopeptide (CTX)とtartrate-resistant acid phosphatase 5b (TRAP5b),骨形成マーカーとしてprocollagen type 1 N-terminal propeptide (PINP)などがある.<br />
<br />
CKD G4-5(透析含む)の30-80歳.除外として,6ヶ月以内の骨折/整形外科的手術,4週以内のリン吸着薬・VitD製剤・カルシウム受容体作動薬の追加/変更,6ヶ月以内の骨吸収抑制剤・骨形成促進剤・ステロイド内服は除外されている.対照としてeGFR 60以上の患者(上記除外項目に加え,骨粗鬆症の診断になっているものは除外)<br />
<br />
測定項目は上記骨マーカーなど.骨生検はCKD患者で施行した(49例施行し,適切な評価をされたのは43例)そのうち11例が低回転,15例が正常,17例が高回転型の骨代謝を示していた.<br />
<br />
結果は上記で記載の通り.<br />
<br />
conclusionでは骨マーカーの有用性を述べていますが,これで臨床が変わるかというと変わらなさそうです.<br />
同時にEditorialに載っている,「The Quest for Better Biomarkers of Bone Turnover in CKD」にも,<br />
’’Do these data nudge forward the paradigm of ROD treatment?<br />
On the basis of the 2017 KDIGO Guidelines, PTH and BSAP can be used in the clinic to identify turnover type because markedly high or low levels identify underlying turnover. In cases when their levels are neither high nor low, bone biopsy is recommended if the results would affect treatment decisions (a none graded recommendation).<br />
Thus, nothing has changed’’<br />
と記載があって,そうですよね,という感想.<br />
<br />kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-54284509615080059212018-04-16T14:18:00.001+09:002018-04-16T14:18:05.714+09:00CKDG4以降の臨床経過・予後など<h2 style="background-color: white; border: 0px; clear: both; color: #2e2e2e; font-family: Arial, Helvetica, "Lucida Sans Unicode", "Microsoft Sans Serif", "Segoe UI Symbol", STIXGeneral, "Cambria Math", "Arial Unicode MS", sans-serif; font-size: 22px; font-weight: 400; line-height: 1.4; margin: 0px 0px 12px; padding: 0px; vertical-align: baseline;">
Improving the prognosis of patients with severely decreased glomerular filtration rate (CKD G4+): conclusions from a Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Controversies Conference</h2>
<div>
<br /></div>
<div>
Kidney International (2018) In press, Available online 12 April 2018</div>
<div>
<br /></div>
<div>
GFRの低下した患者(G4以降)では,腎不全,心不全含む心血管(CVD)イベント,そして死亡リスクが上昇する.だがしかし,腎代替療法の開始含め,詳細なアウトカムや治療戦略はほとんど知られていない.2016年12月にKDIGO Controversies Conferenceが開催された.GFRが低下した患者における,臨床経過や危険因子を検討した.2年間,4年間での腎代替療法を要する可能性などのモデルを作成した.</div>
<div>
また,4つのテーマに沿って論文内で検討した( management of CKD G4+, diagnostic and therapeutic challenges of heart failure, shared decision-making, and optimization of clinical trials in CKD G4+ patients)</div>
<div>
-----------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
CKDG4以降についての論文.</div>
<div>
個人的に一番有用だったのがTiming of clinical outcomes in CKD with severely decreased GFRのツール(<a href="http://www.kdigo.org/equation/" target="_blank">http://www.kdigo.org/equation/</a>)</div>
<div>
高齢者の透析導入が増えています.CKD診療において蛋白尿,高血圧,血糖の管理などを行うことは当然ですが,一方で,目の前の患者が将来どのくらい透析になる可能性があるのか?という疑問は常に頭にあります.</div>
<div>
経時的に診てきた患者さんならGFRの低下具合で推測出来たりもしますが,初診の患者さんだと受診以前のデータが少ないことも珍しくありません.</div>
<div>
そうした場合にこういったリスク評価のツールがあることは参考になります.</div>
<div>
例えば75歳男性,糖尿病既往なし,心血管イベントの既往あり,血圧はsBP 130程度でコントロールされているeGFR 30の症例だとします.人種の項目が白人もしくは黒人しかないですが…,まぁリスクを高めに見積もるということで黒人にしておきます.</div>
<div>
微量アルブミン尿での評価になっているのが実臨床とは即しませんが,500mg/gCrくらいだすると,4年以内に腎代替療法なる可能性が12%,心血管イベント発生が38%,全死亡が36%となり,透析の心配をするより心血管イベントの心配をしたほうがよさそうです.</div>
<div>
日本人に適応できるか,という問題は残りますが,非常に簡単に計算してくれるので参考にはなると思います.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
下記は上記論文より,個人的なメモ.</div>
<div>
------------------------------------------------------------</div>
■心不全<br />
CKD G4以降では心不全を合併している患者が多い.<br />
心不全は,EFの低下した(reduced),HFrEFと,EFが保たれているHFpEFに分けられるが,CKD患者ではHFpEFの頻度が多い.<br />
ただし心不全が進行するかどうかは議論が残っている.<br />
CRIC studyでは,腎代替療法の開始によってEFが低下傾向であったが,統計学的有意差はなかった.<br />
CASCADE studyではCKDG3以降で,左室肥大などを認めたが,EFの変化は統計学的には認めなかった.<br />
IDEAL trialでは,心肥大や心機能共に,統計学的に変化を認めなかった(ただしこのstudyでは腹膜透析患者が多い).<br />
ブラッドアクセスでは,内シャントが高心拍出性心不全を起こす可能性を指摘されている.<br />
CKDG4以降のHF患者の管理は,データが限られている.<br />
また,透析患者でのβブロッカーとRAS系阻害薬の処方率は一般的な心不全患者よりも低い.kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-76646981972275970762018-03-20T20:45:00.000+09:002018-04-16T14:18:20.408+09:00コーヒーはCKDのリスクを減らす<h2>
Coffee Consumption and Incident Kidney Disease: Results From the Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Study</h2>
<div>
AJKD Articles in Press </div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
■Background</div>
<div>
適量のコーヒーは糖尿病などの慢性疾患のリスクを減らすとされるが,コーヒーとCKDの関連は完全には分かっていない.</div>
<div>
■Study Design</div>
<div>
後ろ向きコホート研究</div>
<div>
■Setting & Participants</div>
<div>
14,209 人(45~64歳,the Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Studyより)</div>
<div>
■Outcomes</div>
<div>
25%以上の低下を伴うeGFR< 60 mL/min/1.73 m2をCKD発症とし,CKD関連の入院,死亡, 末期腎不全(ESRD)をアウトカムとした.</div>
<div>
■Results</div>
<div>
中央値24年のフォローで,3845例でCKD発症した.</div>
<div>
男性,白人,喫煙者,そして合併症のない人がコーヒー消費量が多かった.</div>
<div>
統計学的に食事などを調整したところ,コーヒーの消費量が多いほうがコーヒーを飲まない人と比べてCKD発症リスクが低くなった. (HR for <1 cup per day, 0.90 [95% CI, 0.82-0.99]; 1-<2 cups per day, 0.90 [95% CI, 0.82-0.99]; 2-<3 cups per day, 0.87 [95% CI, 0.77-0.97]; and ≥3 cups per day, 0.84 [95% CI, 0.75-0.94]).</div>
<div>
1杯増やすと3%リスクが減る計算になった. (HR, 0.97; 95% CI, 0.95-0.99; P < 0.001).</div>
<div>
■Limitations</div>
<div>
コーヒー消費量は自己申告であることと,観察研究であること.</div>
<div>
■Conclusions</div>
<div>
コーヒーを消費する人のほうがCKD発生のリスクは低かった.</div>
</div>
<div>
------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
個人的にタイムリーな内容だったので紹介.</div>
<div>
よく外来でコーヒーはいいんでしょうか?って聞かれます.</div>
<div>
日本にも同様の報告は多いですが,韓国からも報告があって(Korean J Fam Med. 2013 Jul; 34(4): 265–271.),コーヒーは腎機能に良いという結果でした.</div>
<div>
砂糖を入れすぎると血糖管理にはよくないと思いますが,こういった結果が多いと患者さんには説明しやすいですね.</div>
<div>
NEJMには喫煙などの因子を調整したら全死亡率も低かったという報告もあります(N Engl J Med 2012; 366:1891-1904)</div>
<div>
ただ,だからといって取りすぎはやっぱり良くなくて,不整脈や電解質異常の原因だったり(Crit Rev Food Sci Nutr. 2006;46(2):101-23.),横紋筋融解症になったケース(Hum Exp Toxicol. 2014 Aug;33(8):878-81.)もあるので,ほどほどに.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-80620374232856702692018-03-01T21:25:00.001+09:002018-03-01T21:28:43.835+09:00ELAIN trial 1年後のフォロー:死亡率は早期RRT群で低いという結果.<h2>
Long-Term Clinical Outcomes after Early Initiation of RRT in Critically Ill Patients with AKI</h2>
<div>
J Am Soc Nephrol 29: 1011–1019, 2018</div>
<div>
<br /></div>
<div>
■Abstract</div>
<div>
重症患者におけるAKIで,RRTを早期に開始することが患者のアウトカムを改善するかどうかは議論となっている.我々はELAIN trialの対象の内,230人(99.6%)の患者のフォローを1年間に延長した.プライマリーアウトカムは1年後での,腎イベントの複合とした(持続する腎障害,透析依存,そして死亡率).セカンダリーアウトカムは炎症マーカーを含めた.</div>
<div>
ELAIN trialにおける患者で,プライマリーアウトカムは,early群では111人中72人(64.9%)で,delayed群では119人中106人(89.1%)であり有意差を認めた (odds ratio [OR] with early initiation, 0.23; 95% confidence interval [95% CI], 0.11 to 0.45; P< 0.001).</div>
<div>
1年間での全死亡率はearly群で111人中56人(50.2%)で,delayed群は119人中83人(69.8%)であり,有意差を認めた.(absolute difference, −19.6%; 95% CI, −32.0% to −7.2%; P<0.01). </div>
<div>
1年後生存していた患者の内腎機能が回復しなかったのは,early群では55人中16人(29.1%), delayed群では36人中23人だった.(absolute difference, −34.8%; 95% CI, −54.6% to −15.0%; P=0.001). </div>
<div>
------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
ELAIN trial後,1年を経てフォローしたらどうなったか,という報告.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
ELAIN trial(JAMA. 2016 May 24-31;315(20):2190-9.)を簡単におさらい.</div>
<div>
<div>
→ランダム化,単一施設での研究</div>
<div>
inclusion criteria</div>
<div>
(1) 18-90歳でKDIGO stage 2,(2) NGAL>150ng/ml</div>
<div>
(3) 下記のいずれかを持つ.</div>
<div>
重症敗血症,昇圧剤の使用,過剰輸液(肺水腫,P/F<300mmHg, 体重10%以上の増加),腎臓以外の臓器障害の進行(SOFA>2)</div>
<div>
exclusion criteria</div>
<div>
CKD(GFR<30), RRTの既往,妊婦,腎移植後,肝腎症候群,好中球減少している血液悪性疾患,AIDS,特殊なAKI(腎炎,血管炎,TTPなど)</div>
</div>
<div>
→Early群:KDIGO stage2となり8時間以内に開始</div>
<div>
Delay群:KDIGO stage 3となり12時間以内に開始</div>
<div>
もしくはいずれかで透析開始(BUN>100mg/dl, K>6mEq/lか心電図異常あり,Mg>8mEq/l, 尿量200ml/12h, 臓器浮腫(割り付け前に1回利尿薬投与))</div>
<div>
→Primary outcome:90日死亡率…Early群で15%程度低い(44% vs 65%)</div>
<div>
問題点:単一施設の結果である,Early群とDelay群で20時間程度しか変わらず(結果に差が出るほどの時間の違いとは思えずバイアスがある可能性),Delay群でも90%がRRT施行されている(108/119人),割り付けの時点で体液過剰や肺水腫の患者が多い(volume overloadを透析開始の基準にすると約8割が緊急透析の適応),術後の患者が多い</div>
<div>
<br /></div>
<div>
といったもの.その1年後はどうか,という趣旨.</div>
<div>
状態が悪い患者が多かったことを反映しているのかもしれないですが,両群ともに1年後の時点で死亡率高くないでしょうか?</div>
<div>
もともとのELAIN trialもearly群のほうが死亡率低かったので1年後もearly群がやっぱり良かったよ,という感じなんですが,ELAIN trial自体もいろいろ問題点がありますし….</div>
<div>
外科術後の患者さんでAKI起こしてRRTしたときに,フォローアップの参考材料にはなるかもしれません.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-58147861690843299622018-02-17T20:05:00.001+09:002018-02-17T20:07:42.711+09:00デスモプレシンの使用有無が低Na血症の予後に関与するか<h2>
Outcomes in Severe Hyponatremia Treated With and Without Desmopressin</h2>
<div>
Am J Med. 2017 Oct 20. pii: S0002-9343(17)31043-4.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
Abstract</div>
<div>
■BACKGROUND:</div>
<div>
重度の低Na血症における過剰補正は浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome, ODS)の発症に関わる.デスモプレシンは低Na血症において,過剰補正を抑えることが出来る.この論文では,デスモプレシン使用の有無(使用法の違い含む)でアウトカムを比較した.</div>
<div>
■METHODS:<br />
後ろ向き観察研究,カナダのトロントにおいての2施設で,2004-2014年に低Na血症(<123mEq/L)で入院した全ての患者を対象とした.</div>
<div>
プライマリーアウトカムは安全なNaの補正と規定した (24時間以内の補正が≤12 mEq/L,48時間以内の補正が≤18 mEq/L).</div>
<div>
■RESULTS:<br />
1450例が対象となった.デスモプレシンは254例(17.5%)に使用された.</div>
<div>
デスモプレシンはNaの補正速度を減らしたが,デスモプレシン投与群では安全にNa補正できた患者数が少なかった (174 of 251 [69.3%] vs 970 of 1164 [83.3%]).<br />
この結果はデスモプレシン投与前の過剰補正が大きく影響したと考えられた.<br />
デスモプレシン投与群では,多くがNa補正速度に応じて反応性(reactive strategy)に投与された. (174 of 254 [68.5%]).<br />
1450例中4例がODSを疑われた (0.28%).<br />
交絡因子によると思われるが,デスモプレシン投与群では死亡率が低かった(3.9% vs 9.4%)<br />
Proactive strategyによるデスモプレシン投与により,デスモプレシン投与群のほうが入院期間が長かった.</div>
<div>
■CONCLUSIONS:<br />
観察研究だが,これらのデータはODSの平均的なリスク患者において,reactive strategyでのデスモプレシンの使用を支持するものである.<br />
デスモプレシンの低Na血症における更なる試験が必要である.<br />
------------------------------------------------------------------<br />
<br />
低Na血症におけるデスモプレシン使用の論文.<br />
proactive strategyは,来院時のNa濃度に応じて,Naの推移を見る前にデスモプレシンを投与する方法(デスモプレシン投与群の11%).<br />
reactive strategyは,尿量が増えたりNa濃度が増えたらデスモプレシンを投与する方法(デスモプレシン投与群の68.5%).<br />
rescue strategyはNaが補正速度を超えた場合に投与する方法(デスモプレシン投与群の18.1%)<br />
proactive投与って一般的ではないと思いますが・・・.本論文でもreactiveの投与法が多いですね.また,デスモプレシン投与群の方が尿中の浸透圧や尿中Na濃度が低いです.これも自由水排泄が亢進している病態でデスモプレシン使用を検討すると捉えれば,理にかなっていると思います.<br />
<br />
デスモプレシン使うと補正速度が抑えられる,というのは当然だと思います.<br />
一方で,rescue strategyで24時間以内での補正が間に合わず過剰補正が多かった結果になっています.<br />
ただし,この論文ではNaフォローがどのタイミングで行われていたのか記載がありません.<br />
2014年に発表されたガイドライン(Eur J Endocrinol. 2014 Feb 25;170(3):G1-47.)では確かエキスパートオピニオンで,最短で4時間のフォローになっており,この頻度でフォローすればそこまで過剰補正にならないと思います.また,4時間も目安であり,過剰補正を懸念するならば例えばA-lineを入れて2時間毎フォローでもいいわけです.なのでrescue群ではNaフォローの間隔が長かったのかな?と思うわけです.<br />
でもrescueでのデスモプレシン使用により,48時間以内の補正速度が適正な例が60%いるので,デスモプレシンの有用性はあります.<br />
なので本論文から積極的にデスモプレシンを使った方がよいとは言えないと思うのですが,過剰補正が予測され,かつ自由水投与に限界がある場合(体液過剰や血糖値を気にする場合など)はデスモプレシン投与を検討する,といったところでしょうか.<br />
今までのプラクティスと大きな流れでは変わらなさそうです.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-24713216764517897942018-01-21T15:07:00.005+09:002018-01-21T15:10:31.255+09:00ICUでの透析導入は,CRRTの方が腎予後によいかも<h2 style="background-color: white; box-sizing: inherit; font-family: arial; line-height: 1.25; margin: 0px;">
<span style="font-size: small;">
Renal Replacement Therapy Modality in the ICU and Renal Recovery at Hospital Discharge</span></h2>
<div>
Critical Care Medicine: February 2018 - Volume 46 - Issue 2 - p e102–e110</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
■Objectives</div>
<div>
透析を要する急性腎傷害は,ICUの大きな関心である.IRRTで開始,それともCRRTで開始するのかということは,腎機能の回復に影響を与えるかもしれない.</div>
<div>
本研究では,透析導入時のモダリティが退院時の腎機能回復に影響するかどうかを検証した.</div>
<div>
■Design</div>
<div>
後ろ向きコホート研究で,2010年1月1日~2013年12月31日の期間,フランスの全ICUでAKIに対して血液透析を要した全ての症例を検討した(codeでの記載)</div>
<div>
■Setting</div>
<div>
フランスの291施設のICUが対象</div>
<div>
■Patients</div>
<div>
1,031,120例のうち,58,635例がAKIでRRTを施行され, 25,750例が今回の研究に組み込まれた.</div>
<div>
■Interventions: None.</div>
<div>
■Measurements Main Results</div>
<div>
退院時に生存しており,IRRTもしくはCRRTを受けた患者を対象にした.</div>
<div>
腎回復は,退院前にRRTなしで3日以上経過したものとした.</div>
<div>
全死亡率は56.1%で,腎回復は86.2%であった.</div>
<div>
IRRTは退院時の腎回復する可能性が低かった(odds ratio, 0.910 (95% CI, 0.834–0.992) p value:0.0327)</div>
<div>
■Conclusions</div>
<div>
本研究では,IRRTは,退院時の腎回復の可能性が低いことと関連した.</div>
<div>
---------------------------------------------------------------------------</div>
</div>
<div>
<br /></div>
<div>
ICUでの透析に関する話題.フランスでAKIに対してRRTした症例を調べたら,IRRTだと腎回復する人が少なかったよ,という結論.<br />
<br /></div>
<div>
患者背景が全て吟味されているわけじゃないし,透析導入の基準も示されていない(電解質の問題なのか,尿量の問題なのか,体液の問題なのか,等)ので,すぐに臨床を変えるほどのインパクトはない.</div>
<div>
外科的手技を受けた人がIRRTもCRRTも3-4割いるので,純粋な内科患者には適応できない(どんな手術だったかも記載なし.シャント??)<br />
有意差が出たのは単純に症例数が多かっただけかも.</div>
<div>
ただ以前には,<a href="http://nephrologist-k.blogspot.jp/2017/11/crrtirrt.html" target="_blank">急性肝不全ではCRRTのほうがいいかもしれないという報告</a>もあるので,今後特定の患者層にはCRRTのほうがいい,なんて論文も出てくるんでしょうか.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-67933767863438313472017-12-24T17:33:00.001+09:002017-12-24T17:34:47.892+09:00バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタムの併用はAKIのリスクを増す<h2>
Vancomycin Plus Piperacillin-Tazobactam and Acute Kidney Injury in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis</h2>
<div>
Critical Care Medicine: January 2018 - Volume 46 - Issue 1 - p 12–20</div>
<div>
<br /></div>
<div>
Abstract</div>
<div>
<div>
■Objectives</div>
<div>
集中治療患者における,一般的な成人の,AKIと,バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタム併用を調べた.AKIの比率,AKIまでの時間,そしてオッズ比をバンコマイシン単剤,バンコマイシン+セフェピムもしくはカルバペネム,ピペラシリン/タゾバクタム単剤と比較した.</div>
<div>
■Data Sources</div>
<div>
Pubmed, Embase, Web of science, Cochraneにて検索した.</div>
<div>
■Study Selection</div>
<div>
英語ではないもの,小児,ケースレポートは除外した.</div>
<div>
■Data Extraction</div>
<div>
2名が独立して抽出した.</div>
<div>
■Data Synthesis</div>
<div>
15の出版された論文と,17のアブストラクトがあり,少なくとも24799名の患者がいた.</div>
<div>
AKIの全発症率は16.7%で,うち22.2%がバンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタム併用であり,比較対象は12.9%であった.</div>
<div>
number needed to harmは11であった.AKIに至る時間は,バンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタム併用で速い傾向にあったが,有意差はなかった (mean difference, –1.30; 95% CI, –3.00 to 0.41 d)</div>
<div>
オッズ比は,バンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタム併用が,バンコマイシン単剤に対して3.4(95% CI, 2.57–4.50), セフェピムもしくはカルバペネムとの併用に対して2.68(95% CI, 1.83–3.91), ピペラシリン/タゾバクタム単独に対して2.7(95% CI, 1.97–3.69)であった.</div>
<div>
968名の重症患者でのサブ解析では,バンコマイシン単独でオッズ比9.62(95% CI, 4.48–20.68)だったが,バンコマイシン+セフェピムもしくはカルバペネムとの併用,ピペラシリン/タゾバクタム単独では有意差はなかった(前者odds ratio, 1.43; 95% CI, 0.83–2.47,後者odds ratio, 1.35; 95% CI, 0.86–2.11).</div>
<div>
■Conclusions</div>
<div>
バンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタムでは,バンコマイシン単独,バンコマイシン+セフェピムもしくはカルバペネム,ピペラシリン/タゾバクタム併用に比較してAKIのオッズ比が高かった.重症患者での限られたデータでは,バンコマイシン単独と比較するとAKIのオッズ比は高かったが,他の群との比較では有意差はなかった.</div>
</div>
<div>
-----------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
巷で話題の(?),抗菌薬とAKIの関係.</div>
<div>
同じ話題が,他のジャーナルでも取り上げられたりしてます(Clin Infect Dis. 2017 Jan 15;64(2):116-123.)</div>
<div>
<br /></div>
<div>
抗菌薬の選択はアートの部分が大きいと感じます.感染症を専門にしている先生方は狭域にすることも多いと思いますし,そうでない人は軽症でも炎症が高いという理由でカルバペネムが入っていることはよく見かけます.(もちろんCRPが高ければ重症感染症を示唆するという報告も散見するので,否定はしません.話が逸れるのでここでは割愛します)</div>
<div>
<br /></div>
<div>
そんな中で,今回の論文.PIPC/TAZ+VCMはAKIリスク増やす,という結論.</div>
<div>
例えば想起し得る感染症(原因菌)に対して,かならずしもピペラシリン/タゾバクタムでなくていいなら,他の抗菌薬を優先する,という判断にはなるかもしれませんね.(脳症に気を付けつつセフェピムを使う,等)</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-26673007883456655552017-12-04T13:42:00.002+09:002017-12-04T16:42:00.863+09:00in the literature:IgA腎症におけるステロイド<h2>
Corticosteroids in IgA Nephropathy</h2>
<div>
Am J Kidney Dis. 2017 (article in press)<br />
DOI: http://dx.doi.org/10.1053/j.ajkd.2017.10.004</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<a href="http://nephrologist-k.blogspot.jp/2017/08/igatesting-study.html" target="_blank">TESTING study</a>や,STOP-IgAN trialの結果などを踏まえての,IgA腎症におけるステロイドを論じたもの.</div>
<div>
今までの結果が分かりやすくまとまっています.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
おおざっぱに(恐れ多くも)まとめてしまえば,</div>
<div>
<br /></div>
<div>
・ TESTING studyではステロイドが否定されたわけではなく,一定の効果は示しており,腎機能が悪い患者がいることなどが,副作用が大きくなった原因ではないか</div>
<div>
. STOP-IgAN trialでは蛋白尿が軽微(1g/day未満)だったりマイルドなeGFR低下例が参加していたことで,ステロイドの有用性が示せなかったのではないか</div>
<div>
(他にも2つ論文が示され,ステロイドの有効性が論じられています)</div>
<div>
・ というわけで,我々としてはeGFR 30以上で,蛋白尿1g/day以上の症例ならステロイドで治療するメリットがあると考えている</div>
<div>
<br /></div>
<div>
という内容.ステロイドも,内服は可能なら隔日投与にするようです.</div>
<div>
隔日投与は一般的に行われることも多いと思いますが.</div>
<div>
(up to dateにも記載があります)</div>
<div>
<br /></div>
<div>
著者は,一人はNEFIGAN study(Lancet. 2017 May 27;389(10084):2117-2127.)のメンバーみたいです.</div>
<div>
まだphase 2b trialなので紹介しませんでしたが,こちらの結果も楽しみです.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-7312441687291222232017-11-27T13:46:00.001+09:002017-12-04T16:38:00.560+09:00維持透析患者の大動脈弁狭窄症では,外科的手術よりも経カテーテル治療のほうが死亡率などの結果が良い<h2>
Outcomes of Transcatheter and Surgical Aortic Valve Replacement in Patients on Maintenance Dialysis.</h2>
<div>
The American Journal of Medicine (2017) 130, 1464.e1-1464.e11</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
Abstract</div>
<div>
■BACKGROUND</div>
<div>
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の登場で,多くのハイリスク患者において,治療方法が拡大した.しかし,透析患者については不透明なままである.</div>
<div>
本論文では,外科的大動脈弁置換術(SAVR)とTAVRの院内死亡率などを検証した.</div>
<div>
■METHODS</div>
<div>
2005年1月1日~2014年12月31日においてSAVRもしくはTAVRを受けた維持透析患者を対象とした.それぞれの傾向,院内死亡率,合併症,入院日数,コスト,中間介護施設利用を2群間で比較した(propensity-machedによって行った)</div>
<div>
■RESULTS</div>
<div>
合計で2531人が大動脈弁置換を受け,その内2264人がSAVR, 267人がTAVRであった.</div>
<div>
Propensity score matchingにより 197 人ずつを検証した. </div>
<div>
SAVR群はTAVR群と比較して院内死亡率が2倍であった(13.7% vs 6.1%, P = .021). </div>
<div>
TAVR群では恒久的ペースメーカー留置が多かった(13.2% vs 5.6%, P = .012)が,輸血は少なかった (43.7% vs 56.8%, P = .02).</div>
<div>
他の合併症は同様であった.</div>
<div>
入院日数と自宅以外への退院は,SAVR群で多かった (19 ± 16 vs 11 ± 11 days, P <.001,44.7% vs 31.5%, P = .002) .</div>
<div>
入院コストはTAVRが25%低かった.</div>
<div>
■CONCLUSION</div>
<div>
維持透析患者では,TAVRが院内死亡率の低下やコストの低下に関連していた.</div>
</div>
<div>
-------------------------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
今流行(?)のTAVIに関する報告.</div>
<div>
値段が高いとか(患者さんの負担は保険なので上限ありますが),超高齢者への適応はどうなんだとか,いろいろ議論はあると思いますが,今回は透析患者さんにおいての論文です.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
マッチ前の患者背景では,やはりTAVR群のほうが高齢です(mean 75歳,SAVRでは64歳).でも今回はpropensity socre machingを使用.患者背景に有意差がなくなったところでの検証になっており,TAVRのほうがいいよね,という結果.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
コストもTAVRの方が結果としては安くなっている.でも日本円で780万円….</div>
<div>
<br /></div>
<div>
外科的手術にするかカテーテルにするかは循環器内科に相談,といったところでしょうけど,こうした結果があるということを知っておくことは,紹介する側としては重要だと思います.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-33151869899218500702017-11-20T11:49:00.000+09:002017-12-04T16:37:27.776+09:00急性肝不全ではCRRTの方がIRRTよりも死亡率は下がる<h2 style="background: 0px 0px rgb(255, 255, 255); border: 0px; clear: left; font-family: "open sans", arial, helvetica, "lucida sans unicode", sans-serif; line-height: 1.2; margin: 0px 0px 0.421em; outline: 0px; padding: 0px; vertical-align: baseline;">
<span style="font-weight: normal;"><span style="font-size: large;">
Continuous renal replacement therapy is associated with reduced serum ammonia levels and mortality in acute liver failure</span></span></h2>
<div>
Hepatology. 2017 Aug 31.</div>
<div>
[E-pub ahead of print]; https://doi-org.ezproxy.kyorin-u.ac.jp/10.1002/hep.29488</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
ABSTRACT</div>
<div>
■Background</div>
<div>
高アンモニア血症は,急性肝不全患者(ALF)における頭蓋内圧の亢進と死亡率に関連している.腎代替療法(RRT)が,アンモニア濃度と死亡率にどう影響するか検証した.</div>
<div>
■Methods</div>
<div>
US ALF Study Group registryを用い,1998年1月~2016年12月の患者を検証した.</div>
<div>
まず最初に肝性脳症を呈した患者のアンモニアと,21日生存率(移植無し, TFS)の関連を調べた.続いて,RRT導入後3日間のアンモニアと,21日TFSを調査した.</div>
<div>
■Results</div>
<div>
高アンモニア血症(合計1186名)は,Grade3-4の肝性脳症(HE),神経イベントでの死亡,更には全死亡率と関連していた(HE(116 vs. 83μmol/l) , and mortality at day 21 due to neurological (181 vs. 90μmol/l) and all causes (114 vs. 83μmol/l; P<0.001 for all))</div>
<div>
340名の連日のアンモニアが検証でき,61名(18%)がCRRT,59名(17%)がIRRT,220名(65%)が最初の2日間は透析なし(no RRT)といった内訳であった.</div>
<div>
1-3日において,アンモニアの減少は CRRT 38%, IRRT 23%, noRRT 19%であった.</div>
<div>
noRRTと比較してCRRTではアンモニアの減少は有意差があったが,IRRTでは有意差はなかった.</div>
<div>
組み入れ時期,年齢,原因,疾患活動性を補正しても,CRRTでは全死亡率の改善(21日TFS)を認めた(odds ratio [OR], 0.47 [95% confidence interval (CI), 0.26-0.82]) .</div>
<div>
一方で, IRRTでは死亡率が増加していた (OR, 1.68 [95%CI, 1.04-2.72]) .</div>
<div>
■Conclusions</div>
<div>
高アンモニア血症はGrade3-4の肝性脳症,21日TFSと関連していた.</div>
<div>
また,CRRTではアンモニアと21日TFSの改善を認めた.</div>
</div>
<div>
--------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
急性肝不全におけるCRRTの有効性を検討した論文.</div>
<div>
IRRTが死亡率を増やす結果になっています.</div>
<div>
IRRT群のほうが重症なのかと思いきや,CRRT群のほうが昇圧剤の使用が多かったり(64% vs 51%, P=0.029), INRは延長していたり(3.2 vs 2.7 P=0.003),そういうわけではない様子.乳酸値はCRRT群のほうが低い(6.2 vs 7.9 P=0.025)けど,そこまで大きく影響するとも思えない.</div>
<div>
IRRTの細かな設定が分からないので,日本で適応できるかどうかは微妙ですが,IRRTのほうがいいかもしれません.しっかりアンモニアが下がればいいのかもしれませんが.</div>
<div>
*海外だとlow doseでも<35ml/kg/hrです.今までIRRT施行している患者さんで,そこまでのdoseで施行している症例に出会ったことがないです….日本の保険だと600-800ml/hrが限界で,それだと10ml/kg/hr~13ml/kg/hrになるので,日本での適応には慎重にならざるを得ません(日内会誌 103:1145~1152,2014)</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-80964596763659174742017-11-13T14:42:00.000+09:002017-11-13T14:42:21.702+09:00ADPKDにおける,腎障害進行例でのトルバプタン(サムスカ®)の効果(REPRISE Trial)<h2 style="background: none rgb(255, 255, 255); border: 0px; font-family: "times new roman"; font-size: 1.45em; font-stretch: normal; font-weight: normal; line-height: 1.05em; margin: 0px; outline: 0px; padding: 8px 0px; vertical-align: baseline;">
Tolvaptan in Later-Stage Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease(REPRISE Trial)</h2>
<div>
N Engl J Med. 2017 Nov 4.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
Abstract(一部抜粋)</div>
<div>
■Background </div>
<div>
過去の論文では,腎障害が軽微(推定クレアチニンクリアランス≧60ml/min)なADPKD患者において,トルバプタンが腎容量の増加とGFRのの低下を遅くするという結果であった.しかし,同時にアミノトランスフェラーゼとビリルビンの上昇を認めていた.より腎障害の進行したADPKD患者において,トルバプタンの効果と安全性は分かっていない.</div>
<div>
■Methods </div>
<div>
他施設ランダム化比較試験.</div>
<div>
ランダム化の前に,8週間の導入期を設け,副作用などを確認した.</div>
<div>
18-55歳でeGFR 25~65と,56-65歳でeGFR 25-44の患者,1370人がランダム化され12ヶ月の試験を行った.</div>
<div>
プライマリーエンドポイントはeGFRのベースラインからの変化とし,安全性は毎月検証した.</div>
<div>
■Results </div>
<div>
トルバプタン内服群で,eGFRの低下は-2.34(95% confidence interval [CI], -2.81 to -1.87)であり,プラセボ群では-3.61 (95% CI, -4.08 to -3.14)であった.(difference, 1.27 ml per minute per 1.73 m2; 95% CI, 0.86 to 1.68; P<0.001). </div>
<div>
アミノトランスフェラーゼの上昇(>上限の3倍)はトルバプタン群で681人中38人(5.6%)に認め,プラセボ群では685人中8人(1.2%)で認めた.トルバプタン内服中止によって正常に戻った.ビリルビンの上限の2倍以上の上昇は認めなかった.</div>
<div>
■Conclusions </div>
<div>
トルバプタンは腎障害が進んだADPKD患者においても,12ヶ月間において,eGFRの低下を抑えられた.(Funded by Otsuka Pharmaceuticals and Otsuka Pharmaceutical Development and Commercialization; REPRISE ClinicalTrials.gov number, NCT02160145 .).</div>
<div>
-------------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
ADPKDのトルバプタンに関する話題.</div>
<div>
早期腎症だけでなく,ある程度進行していても効果がありそう,という結果.</div>
<div>
日本では既にメジャーな治療薬になっていると感じますが,アメリカではまだ未承認なんですね.なのでphase3試験,ということです.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
他に一般的な血圧管理や脂質管理などしかやれることがない以上,トルバプタンは必要ですね.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
一方で,ADPKD患者における死因の大きな原因は,心臓(36%),感染症(24%),脳血管(12%)となっています(J Am Soc Nephrol. 1995 Jun;5(12):2048-56.)</div>
<div>
脳血管の12%の内訳は,脳動脈瘤破裂が6%,脳出血が5%,脳梗塞が1%となっています.</div>
<div>
トルバプタンのADPKDにおける,腎障害進行の抑制効果は検証されていますが,今後は心臓,脳動脈瘤破裂などのイベントをどのように抑えられるか,感染症は減るのか,というところが大事になってくるのではないかと感じます.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-61199713133978049912017-10-23T10:14:00.000+09:002017-10-23T10:14:46.963+09:00Clinical Question:腎限局型血管炎(Renal Limited vasculitis; RLV)ではCRP陰性でもいいのか?今回はClinical Questionとして勉強したことを,あまりインターネット上や論文でひっかからなかったので載せておきます.<div>
<br /></div>
<div>
<b><u>Clinical Question:腎限局型血管炎(RLV)ではCRP陰性でもいいのか?</u></b></div>
<div>
<br /></div>
<div>
少なくとも1年前の血清クレアチニンは正常域(1.1程度)だった人が,急激なクレアチニン上昇(4.5程度)で紹介受診.CRPは陰性だったのですが,MPO-ANCAが陽性(確か150程度)だったので腎限局型血管炎として治療開始となりました.生検は本人の意向もあり施行出来ず.腎萎縮はそこまで強くなかったと記憶しています.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
CRP陰性になる血管炎としては,中枢限局型が代表です.</div>
<div>
これは,例えば髄膜炎ではCRP陰性であることも珍しくないので理解しやすかったんですが,では腎限局型では今回のようにCRP陰性が珍しくないのか?という疑問が生まれました.</div>
<div>
(ちなみに他のCRP陰性を呈し得る代表例は,超急性期の感染症,漿膜炎や滑膜炎のないSLE,トシリズマブ投与中が挙げられます)</div>
<div>
<br /></div>
<div>
RPGNのガイドラインでは,RPGN早期発見のための指標として,1)尿検査異常,2)腎機能低下, 3)CRPやESR高値を挙げ,1)~3)がある場合,RPGNの疑いとして専門機関への受診を推奨しています.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
RLV, GPA, MPAを比較した論文があります.全て腎生検で確定診断した症例に関してです.(Kidney Int. 2002 Jan;61(1):80-9.)<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj-6JGqC7Nf_X0zbG65kFfo-Fr2SLGGVul_Ir5CWhWSSy7X70ig-rovQpPgyfTZBZ1KtU2p19Jdl7EU1nBX9R3nG4opqKz1JltCXrkKVZPW8HW8bll5AiU-lMHmNBjiKgDZhQFvxuLdW7Ae/s1600/image.png" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="571" data-original-width="500" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj-6JGqC7Nf_X0zbG65kFfo-Fr2SLGGVul_Ir5CWhWSSy7X70ig-rovQpPgyfTZBZ1KtU2p19Jdl7EU1nBX9R3nG4opqKz1JltCXrkKVZPW8HW8bll5AiU-lMHmNBjiKgDZhQFvxuLdW7Ae/s1600/image.png" /></a></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
残念ながらCRPに関する記載はなかったですが,どうやらRLVではMPO-ANCA陽性例が多いようです.</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
<br /></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
成人例は見つからなかったのですが,子ども(7-14歳)の6症例では,下記のような結果になっています.これも全員腎生検で確定診断しています.</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
(Clin Nephrol. 2013 Nov;80(5):388-94.)</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEineKlwDqk_nLND0kJoaU4rMCo_1hPgqP5ZG_ni6qF0wBN5MT56DovW-yeeL9wr6cfJ0PHxUU5-oirLFNq0_CLtNZReTXM6t6f6JvWnltzlcxLAzhb1vqEqIHuDwAWjUscpMKF1kHmhRFA-/s1600/image2.png" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="367" data-original-width="747" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEineKlwDqk_nLND0kJoaU4rMCo_1hPgqP5ZG_ni6qF0wBN5MT56DovW-yeeL9wr6cfJ0PHxUU5-oirLFNq0_CLtNZReTXM6t6f6JvWnltzlcxLAzhb1vqEqIHuDwAWjUscpMKF1kHmhRFA-/s1600/image2.png" /></a></div>
<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;">
<a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh9cYTWNAAKFDDaXPR2cCA-hu6x0k49khbYUASWMvmCWql5ZbYVlatKwF9D3ig3OQLvLBD5_CrwcM6enSErtAXkn9TkEuup_mYTM0JzC4Svc89QYh2r2h09CI6XvQcXvQrwSob2WkMAkMvH/s1600/image3.png" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="380" data-original-width="951" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh9cYTWNAAKFDDaXPR2cCA-hu6x0k49khbYUASWMvmCWql5ZbYVlatKwF9D3ig3OQLvLBD5_CrwcM6enSErtAXkn9TkEuup_mYTM0JzC4Svc89QYh2r2h09CI6XvQcXvQrwSob2WkMAkMvH/s1600/image3.png" /></a></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
発熱のない症例が2つ,CRP陰性の症例が1つ,という報告です.</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
ただCRP陰性例でもESRは上昇しています.</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
<br /></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
成人例でのケースレポートが見つからなかったのですが,どうやらCRPは陰性でも否定できず,ESRは参考になりそうです.</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
炎症によらず,MPO-ANCA陽性で急速な腎機能悪化を認める場合は,RLVとして対応する,ということになるか.</div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
<br /></div>
<div class="separator" style="clear: both; text-align: left;">
誰か成人例のケースシリーズとかレビューとか知っている人がいたら教えてくれれば嬉しいです.</div>
</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-92087787081349247272017-10-02T14:58:00.004+09:002017-12-04T16:37:08.155+09:00血尿の改善がIgA腎症の腎予後を改善する<div>
<h2>
Remission of Hematuria Improves Renal Survival in IgA Nephropathy</h2>
</div>
<div>
<div>
J Am Soc Nephrol. 2017 Oct;28(10):3089-3099. </div>
<div>
<br /></div>
</div>
■ABSTRACT<br />
<div>
血尿はIgA腎症で主な症状であるが,病勢の進行において血尿の影響はあまり調べられていない.112人のIgA腎症患者を,14±10.2年フォローし,尿所見などを経時的に記録した.</div>
<div>
<div>
血尿の他には,蛋白尿(0.75g/day以下とそれより上)も分類した.</div>
<div>
ESRDもしくは腎機能の50%の低下は,血尿が持続している群で有意に多かった (30.4% and 37.0% versus 10.6% and 15.2%, respectively; P=0.01).</div>
<div>
多変量解析では,血尿,蛋白尿,ベースラインの腎機能,尿細間質の線維化がそれぞれ独立したESRD進行への予測因子だった.</div>
<div>
血尿が消失した患者では,腎機能の低下する程度も改善した.(-6.45±14.66→-0.18±2.56 ml/min per 1.73 m2 per year (P=0.001))</div>
<div>
蛋白尿0.75g/day以上の患者は,それ以下の患者と比較して,腎予後は悪かった.</div>
<div>
更に,血尿と蛋白尿(0.75g/day以上),両方ある群では,その他の3郡と比べて有意に腎予後は悪かった.</div>
<div>
結論として,血尿の消失はIgA腎症において良好な効果があるだろう.</div>
</div>
<div>
------------------------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
IgA腎症の治療で大事なのは血圧と蛋白尿の管理であり,RAS系阻害薬の有効性は支持されています.STOP-IgAN studyやTESTING studyではステロイドや他の免疫抑制剤の有効性を示せていません(<a href="http://nephrologist-k.blogspot.jp/2017/08/igatesting-study.html" target="_blank">こちらも参照</a>,ただし腎機能が急激に悪くなる場合は,やむなしと思います)</div>
<div>
<br /></div>
<div>
本論文ではpersistent hematuriaを24.7 [13–71] RBC per hpfとし,negative or minimalを0.2 [0–3.1] red blood cells per high-power fieldとしている.</div>
<div>
そして経過中施行された治療も特に有意差は認めず.</div>
<div>
ただ,蛋白尿>0.75g/dayと血尿がある群で,更に免疫抑制剤で治療した群としなかった群で分けたとき,免疫抑制剤で治療した群のほうが腎機能の悪化が少ない傾向があった,とのこと.ステロイド+MMFの治療が多いことが影響しているのだろうか?</div>
<div>
同時に載っていたeditorial(J Am Soc Nephrol. 2017 Oct;28(10):2831-2834.)にもあるが,今後蛋白尿がコントロールされているのは前提として,血尿に対しての介入を比較するstudyが登場するかもしれない.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
ちなみに扁摘パルスも期待されてた有効性が示せてない(ということで日本と違ってKDIGOでの推奨は基本的にない)ですが,個人的な経験で,扁摘パルスして血尿が消失した症例が珍しくないんですけど,血尿が強いとかそういうのには効くかもしれないってことなんでしょうか.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
奥が深い.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-14479527378149999642017-09-18T13:17:00.003+09:002017-12-04T16:36:52.395+09:00腎保護にアロプリノールとフェブキソスタットはどちらが効果的か?<h2>
Comparative effectiveness of allopurinol versus febuxostat for preventing incident renal disease in older adults: an analysis of Medicare claims data</h2>
<div>
Ann Rheum Dis 2017;76:1669–1678</div>
<div>
<br /></div>
<div>
<div>
■Abstract</div>
<div>
Objective:高齢者においてアロプリノールとフェブキソスタットのどちらが腎疾患予防に効果的か</div>
<div>
Methods:後ろ向きコホート研究.2006-2012年で,新規にアロプリノールもしくはフェブキソスタットによる治療が開始となった患者を対象とした.(baseline period of 183 days without either medication). 5:1でpropensity-matched Cox regression analysesを用いて,腎疾患発生のハザード比を比較した.</div>
<div>
results:31465例の新規のアロプリノール,フェブキソスタット処方が26443人の患者において認めた.そのうち8570例が腎疾患の発症を認めた.アロプロノールは192/1000person-yearsであったのに対し,フェブキソスタットは338/1000person-yearsであった.アロプリノールは高用量のほうが発症率は低く,200mg/day未満,200-299mg/day,300mg/day以上では,それぞれ1000 person-yearsは238, 176, 155であった.フェブキソスタット 40mg/day, 80mg/dayでは341, 326であった.</div>
<div>
propensity-matched analysesでは,フェブキソスタットに比べて,アロプリノールはハザード比0.61 (95% CI 0.49 to 0.77)であった.</div>
<div>
また,フェブキソスタット40mg/dayと比べて,アロプリノール200mg/day未満,200-299mg/day,300mg/day以上はいずれもハザード比は低かった.( 0.75 (95% CI 0.65 to 0.86), 0.61 (95% CI 0.52 to 0.73) and 0.48 (95% CI 0.41 to 0.55))</div>
<div>
Conclusions :アロプリノールは高齢者の腎疾患発症においてフェブキソスタットよりも効果的である</div>
</div>
<div>
------------------------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
アロプリノールとフェブキソスタットの腎保護作用を調べた論文.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
まずは高尿酸血症に対する基本的なおさらい.</div>
<div>
CKDがない健常者の場合,まずは痛風発作の有無で治療適応を考える.</div>
<div>
日本の2012年高尿酸血症のガイドラインでは,痛風発作があれば治療開始し,6mg/dl以下にすることが推奨.</div>
<div>
痛風発作のない,いわゆる無症候性高尿酸血症に関しては,8mg/dl以上で他の合併症(腎疾患や心疾患など)があれば治療開始とし,また,9mg/dl以上であれば合併症がなくても治療適応だとしている.</div>
<div>
一方で,アメリカリウマチ学会は痛風発作を起こしたものや,CKD stage3以降もしくはCKD stage2で器質的なものがあれば治療対象としている.</div>
<div>
症状・合併症のない無症候性高尿酸血症については治療意義が分かっていない,ということは留意すべき.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
ではCKDがある場合はどうするか?</div>
<div>
これも前提として,はっきりとした尿酸を下げる事のメリットは証明されていない(正確には効果があったとする論文と効果がないとする論文が混在している)</div>
<div>
高尿酸血症が原因でCKDが進行するのか,それともCKDがあるから尿酸値が上昇しているだけなのか,という議論がある(今回の論文中にも卵が先か,鶏が先か,という記述がある)</div>
<div>
日本のCKDガイドラインでは治療を推奨している.</div>
<div>
KDIGO(2012)では,根拠が足りないとして明確な記載はなし(not graded)</div>
<div>
本論文によると,現在アロプリノールとフェブキソスタット,それぞれについてプラセボとの比較研究が進行中とのこと.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
そんな中,本論文はアロプリノールとフェブキソスタット,どちらが腎保護に対してよさそうか,というもの.<br />
痛風に対してはフェブキソスタットのアロプリノールに対する優位性がなかったとして,cost-effectivenessの点からフェブキソスタットは第一選択にすべきではないとする意見もある(Semin Arthritis Rheum. 2013 Dec;43(3):367-75)</div>
<div>
<br /></div>
<div>
本論文の結果としては,腎保護に対してもアロプリノールのほうがよい,というものだが,outcomeが臨床的なもの(CrやGFRの推移)ではなく,病名(ICD-9)で行っている点には注意が必要.バイアスがかかっている可能性がある.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
ただ,痛風に対するstudyの結果などをみると,特に理由がなければアロプリノールが優先されるかもしれない.</div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-1742233317679583687.post-82002696388853362212017-08-29T20:54:00.000+09:002017-12-04T16:36:11.068+09:00尿中NH4+は血中HCO3-よりも優れた酸塩基平衡傷害の指標になるか?<h2>
Urine Ammonium Predicts Clinical Outcomes in<br />Hypertensive Kidney Disease</h2>
<div>
J Am Soc Nephrol 28: 2483–2490, 2017.</div>
<div>
<br /></div>
<div>
■ABSTRACT</div>
<div>
代謝性アシドーシスはCKDの予後と関連する.</div>
<div>
腎におけるアンモニアの排泄障害は,アシドーシスの病因として重要であり,特にアシドーシスを認めない人において,尿中アンモニウムイオンは血中HCO3-よりも早期の酸塩基平衡障害の指標になるかもしれない.</div>
<div>
我々は,尿中アンモニウムイオンの量とアウトカムについて調べた.</div>
<div>
African American Study of Kidney Disease and Hypertension participants (n=1044)にて評価した.</div>
<div>
尿中アンモニウムイオン/dayの中央値は19.5mEqであった(95% confidence interval [95% CI], 6.5 to 43.2)</div>
<div>
Cox回帰分析 (adjusted for demographics, measured GFR, 蛋白尿, BMI, net endogenous acid production, and serum potassium and bicarbonate)では,死亡と透析の複合アウトカムにおいて,high tertitleと比較してlow tertileではハザード比1.46(95% CI, 1.13 to 1.87) ,middle tertileでは1.14 (95% CI, 0.89 to 1.46)であった.</div>
<div>
ベースラインでアシドーシスがない患者では,尿中アンモニウムイオン/dayが,20mEq未満の群では,20mEq以上の群と比較して,ハザード比が1.36であった (95% CI, 1.09 to 1.71).</div>
<div>
更に,high ammonium tertitleと比較して,1年以内にアシドーシスを呈するオッズはlow ammonium tertileで高かった(adjusted odds ratio, 2.56; 95% CI, 1.04 to 6.27).</div>
<div>
結論として,尿中アンモニウムイオンの排泄低下は高血圧性腎症において,アシドーシスが無い人でも,死亡・腎不全と関連していた.HCO3-が正常でも,アシドーシスを呈する前に,尿中アンモニウムイオン排泄が低下している人を特定しアルカリ製剤を投与することが有益かもしれない.</div>
<div>
-------------------------------------------------------------------------------------</div>
<div>
<br /></div>
<div>
今は日本のCKDガイドラインでも,KDIGOのガイドラインでも,酸塩基平衡への介入はHCO3-が主体です.HCO3-を20mEq/l以上にすることがCKDの進行を抑える,ということでHCO3-が20mEq/lよりも低ければ炭酸水素ナトリウムなどの使用が推奨されています.(KDIGOでは22mEq/l)</div>
<div>
今回の論文は,HCO3-が正常な人でも,もっと早期に介入できる指標があるんではないの?っていうことで尿中アンモニウムイオンを評価したもの.</div>
<div>
尿中NH4+で治療する群とHCO3-で治療介入する群での比較が必要だと思うので現時点で診療の方針に変更はないけど,今後こういうstudyが出てくるんでしょうか.</div>
<div>
<br /></div>
kobayashihttp://www.blogger.com/profile/16760537085696644206noreply@blogger.com0