2018年7月9日月曜日

eGFR 30以上ならメトホルミンでの乳酸アシドーシスの頻度は変わらない

Association of Metformin Use With Risk of Lactic Acidosis Across the Range of Kidney Function
A Community-Based Cohort Study

JAMA Intern Med. 2018;178(7):903-910.

Abstract
■Importance
米国では約100万人の2型糖尿病かつCKD患者がおり,ガイドラインで推奨されているメトホルミンの投与がされていない.これは,CKD患者におけるアシドーシスの危険性が不確実であることを反映しているのかもしれない.
■Objective  
eGFRの程度,推移に応じてメトホルミンの使用とアシドーシスによる入院の関係を調べた.
■Design, Setting, and Participants  
Geisinger Health Systemにおける糖尿病患者75413人を2004年1月~2017年1月までのeGFRの経時的変化を用いて評価した.
結果は67578人の新規メトホルミン使用者と,14439人の新規SU薬使用者を
Geisinger Health Systemでの結果を、MarketScan databaseでの新規メトホルミン使用者67578人と新規SU薬使用者14439人で再度検討した.
■Exposures 
Metformin use.
■Main Outcomes and Measures 
アシドーシスによる入院
■Results  
Geisinger Health Systemでの75413人は,平均年齢60.4歳で,51%が女性であった.
2335人が中央値5.7年でアシドーシスにより入院していた(interquartile range, 2.5-9.9 years). 
他の血糖降下薬と比較して,長期のメトホルミン使用はアシドーシスの発生に関与せず(adjusted hazard ratio [HR], 0.98; 95% CI, 0.89-1.08),また,eGFR 45-50mL/min/1.73m2 (adjusted HR, 1.16; 95% CI, 0.95-1.41), eGFR 30-44 mL/min/1.73 m2(adjusted HR, 1.09; 95% CI, 0.83-1.44)でもアシドーシスの発生には関係なかった.
一方で,eGFR 30mL/min/1.73m2未満はリスクが増えていた.(adjusted HR, 2.07; 95% CI, 1.33-3.22). 
結果は新規メトホルミン使用者と新規SU薬使用者を比較しても同様であった.
■Conclusions and Relevance  
メトホルミン使用によるアシドーシスは,eGFR 30mL/min/1.73m2未満と関連があった.
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CKDとメトホルミンによるアシドーシスのstudy.
日本の添付文書だと,中等度以上の腎機能障害には禁忌とあるが具体的な数値はなし.
日本糖尿病学会のHPには,「eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合にはメトホルミンは禁忌である。eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする。」との記載あり(参照

メトホルミンは他の血糖降下薬と比較し心血管イベントの抑制などで有効性を示せており,現時点では糖尿病治療薬の第一選択である.
第二選択薬については結論が出ていなかったが,2018年米国糖尿病学会の推奨が出た(Diabetes Care. 2018 Jan;41(Suppl 1):S73-S85.)
心血管系の既往がある場合は,SGLT2阻害薬,GLP1作動薬が第二選択になり得るというものになっている.
SGLT2阻害薬は利尿薬の側面もあり,脱水が起こる危険性がある.
この場合,eGFR 30以上でもメトホルミン併用でアシドーシスのリスクが増えないか,という懸念が生じる.
どちらも心血管イベント抑制に有効性が示せているだけに処方機会が今までよりも増えていくと思うが,個々の症例によって副作用のリスクを評価することは忘れない方がいいだろうと思われる.

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