2018年3月1日木曜日

ELAIN trial 1年後のフォロー:死亡率は早期RRT群で低いという結果.

Long-Term Clinical Outcomes after Early Initiation of RRT in Critically Ill Patients with AKI

J Am Soc Nephrol 29: 1011–1019, 2018

■Abstract
重症患者におけるAKIで,RRTを早期に開始することが患者のアウトカムを改善するかどうかは議論となっている.我々はELAIN trialの対象の内,230人(99.6%)の患者のフォローを1年間に延長した.プライマリーアウトカムは1年後での,腎イベントの複合とした(持続する腎障害,透析依存,そして死亡率).セカンダリーアウトカムは炎症マーカーを含めた.
ELAIN trialにおける患者で,プライマリーアウトカムは,early群では111人中72人(64.9%)で,delayed群では119人中106人(89.1%)であり有意差を認めた (odds ratio [OR] with early initiation, 0.23; 95% confidence interval [95% CI], 0.11 to 0.45; P< 0.001).
1年間での全死亡率はearly群で111人中56人(50.2%)で,delayed群は119人中83人(69.8%)であり,有意差を認めた.(absolute difference, −19.6%; 95% CI, −32.0% to −7.2%; P<0.01). 
1年後生存していた患者の内腎機能が回復しなかったのは,early群では55人中16人(29.1%), delayed群では36人中23人だった.(absolute difference, −34.8%; 95% CI, −54.6% to −15.0%; P=0.001). 
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ELAIN trial後,1年を経てフォローしたらどうなったか,という報告.

ELAIN trial(JAMA. 2016 May 24-31;315(20):2190-9.)を簡単におさらい.
→ランダム化,単一施設での研究
 inclusion criteria
 (1) 18-90歳でKDIGO stage 2,(2) NGAL>150ng/ml
 (3) 下記のいずれかを持つ.
 重症敗血症,昇圧剤の使用,過剰輸液(肺水腫,P/F<300mmHg, 体重10%以上の増加),腎臓以外の臓器障害の進行(SOFA>2)
 exclusion criteria
 CKD(GFR<30), RRTの既往,妊婦,腎移植後,肝腎症候群,好中球減少している血液悪性疾患,AIDS,特殊なAKI(腎炎,血管炎,TTPなど)
→Early群:KDIGO stage2となり8時間以内に開始
 Delay群:KDIGO stage 3となり12時間以内に開始
      もしくはいずれかで透析開始(BUN>100mg/dl, K>6mEq/lか心電図異常あり,Mg>8mEq/l, 尿量200ml/12h, 臓器浮腫(割り付け前に1回利尿薬投与))
→Primary outcome:90日死亡率…Early群で15%程度低い(44% vs 65%)
問題点:単一施設の結果である,Early群とDelay群で20時間程度しか変わらず(結果に差が出るほどの時間の違いとは思えずバイアスがある可能性),Delay群でも90%がRRT施行されている(108/119人),割り付けの時点で体液過剰や肺水腫の患者が多い(volume overloadを透析開始の基準にすると約8割が緊急透析の適応),術後の患者が多い

といったもの.その1年後はどうか,という趣旨.
状態が悪い患者が多かったことを反映しているのかもしれないですが,両群ともに1年後の時点で死亡率高くないでしょうか?
もともとのELAIN trialもearly群のほうが死亡率低かったので1年後もearly群がやっぱり良かったよ,という感じなんですが,ELAIN trial自体もいろいろ問題点がありますし….
外科術後の患者さんでAKI起こしてRRTしたときに,フォローアップの参考材料にはなるかもしれません.

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