2017年10月2日月曜日

血尿の改善がIgA腎症の腎予後を改善する

Remission of Hematuria Improves Renal Survival in IgA Nephropathy

J Am Soc Nephrol. 2017 Oct;28(10):3089-3099. 

■ABSTRACT
血尿はIgA腎症で主な症状であるが,病勢の進行において血尿の影響はあまり調べられていない.112人のIgA腎症患者を,14±10.2年フォローし,尿所見などを経時的に記録した.
血尿の他には,蛋白尿(0.75g/day以下とそれより上)も分類した.
ESRDもしくは腎機能の50%の低下は,血尿が持続している群で有意に多かった (30.4% and 37.0% versus 10.6% and 15.2%, respectively; P=0.01).
多変量解析では,血尿,蛋白尿,ベースラインの腎機能,尿細間質の線維化がそれぞれ独立したESRD進行への予測因子だった.
血尿が消失した患者では,腎機能の低下する程度も改善した.(-6.45±14.66→-0.18±2.56 ml/min per 1.73 m2 per year (P=0.001))
蛋白尿0.75g/day以上の患者は,それ以下の患者と比較して,腎予後は悪かった.
更に,血尿と蛋白尿(0.75g/day以上),両方ある群では,その他の3郡と比べて有意に腎予後は悪かった.
結論として,血尿の消失はIgA腎症において良好な効果があるだろう.
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IgA腎症の治療で大事なのは血圧と蛋白尿の管理であり,RAS系阻害薬の有効性は支持されています.STOP-IgAN studyやTESTING studyではステロイドや他の免疫抑制剤の有効性を示せていません(こちらも参照,ただし腎機能が急激に悪くなる場合は,やむなしと思います)

本論文ではpersistent hematuriaを24.7 [13–71] RBC per hpfとし,negative or minimalを0.2 [0–3.1] red blood cells per high-power fieldとしている.
そして経過中施行された治療も特に有意差は認めず.
ただ,蛋白尿>0.75g/dayと血尿がある群で,更に免疫抑制剤で治療した群としなかった群で分けたとき,免疫抑制剤で治療した群のほうが腎機能の悪化が少ない傾向があった,とのこと.ステロイド+MMFの治療が多いことが影響しているのだろうか?
同時に載っていたeditorial(J Am Soc Nephrol. 2017 Oct;28(10):2831-2834.)にもあるが,今後蛋白尿がコントロールされているのは前提として,血尿に対しての介入を比較するstudyが登場するかもしれない.

ちなみに扁摘パルスも期待されてた有効性が示せてない(ということで日本と違ってKDIGOでの推奨は基本的にない)ですが,個人的な経験で,扁摘パルスして血尿が消失した症例が珍しくないんですけど,血尿が強いとかそういうのには効くかもしれないってことなんでしょうか.

奥が深い.

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