2017年11月27日月曜日

維持透析患者の大動脈弁狭窄症では,外科的手術よりも経カテーテル治療のほうが死亡率などの結果が良い

Outcomes of Transcatheter and Surgical Aortic Valve Replacement in Patients on Maintenance Dialysis.

The American Journal of Medicine (2017) 130, 1464.e1-1464.e11

Abstract
■BACKGROUND
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の登場で,多くのハイリスク患者において,治療方法が拡大した.しかし,透析患者については不透明なままである.
本論文では,外科的大動脈弁置換術(SAVR)とTAVRの院内死亡率などを検証した.
■METHODS
2005年1月1日~2014年12月31日においてSAVRもしくはTAVRを受けた維持透析患者を対象とした.それぞれの傾向,院内死亡率,合併症,入院日数,コスト,中間介護施設利用を2群間で比較した(propensity-machedによって行った)
■RESULTS
合計で2531人が大動脈弁置換を受け,その内2264人がSAVR, 267人がTAVRであった.
Propensity score matchingにより 197 人ずつを検証した. 
SAVR群はTAVR群と比較して院内死亡率が2倍であった(13.7% vs 6.1%, P = .021). 
TAVR群では恒久的ペースメーカー留置が多かった(13.2% vs 5.6%, P = .012)が,輸血は少なかった (43.7% vs 56.8%, P = .02).
他の合併症は同様であった.
入院日数と自宅以外への退院は,SAVR群で多かった (19 ± 16 vs 11 ± 11 days, P <.001,44.7% vs 31.5%, P = .002) .
入院コストはTAVRが25%低かった.
■CONCLUSION
維持透析患者では,TAVRが院内死亡率の低下やコストの低下に関連していた.
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今流行(?)のTAVIに関する報告.
値段が高いとか(患者さんの負担は保険なので上限ありますが),超高齢者への適応はどうなんだとか,いろいろ議論はあると思いますが,今回は透析患者さんにおいての論文です.

マッチ前の患者背景では,やはりTAVR群のほうが高齢です(mean 75歳,SAVRでは64歳).でも今回はpropensity socre machingを使用.患者背景に有意差がなくなったところでの検証になっており,TAVRのほうがいいよね,という結果.

コストもTAVRの方が結果としては安くなっている.でも日本円で780万円….

外科的手術にするかカテーテルにするかは循環器内科に相談,といったところでしょうけど,こうした結果があるということを知っておくことは,紹介する側としては重要だと思います.

2017年11月20日月曜日

急性肝不全ではCRRTの方がIRRTよりも死亡率は下がる

Continuous renal replacement therapy is associated with reduced serum ammonia levels and mortality in acute liver failure

Hepatology. 2017 Aug 31.
[E-pub ahead of print]; https://doi-org.ezproxy.kyorin-u.ac.jp/10.1002/hep.29488

ABSTRACT
■Background
高アンモニア血症は,急性肝不全患者(ALF)における頭蓋内圧の亢進と死亡率に関連している.腎代替療法(RRT)が,アンモニア濃度と死亡率にどう影響するか検証した.
■Methods
US ALF Study Group registryを用い,1998年1月~2016年12月の患者を検証した.
まず最初に肝性脳症を呈した患者のアンモニアと,21日生存率(移植無し, TFS)の関連を調べた.続いて,RRT導入後3日間のアンモニアと,21日TFSを調査した.
■Results
高アンモニア血症(合計1186名)は,Grade3-4の肝性脳症(HE),神経イベントでの死亡,更には全死亡率と関連していた(HE(116 vs. 83μmol/l) , and mortality at day 21 due to neurological (181 vs. 90μmol/l) and all causes (114 vs. 83μmol/l; P<0.001 for all))
340名の連日のアンモニアが検証でき,61名(18%)がCRRT,59名(17%)がIRRT,220名(65%)が最初の2日間は透析なし(no RRT)といった内訳であった.
 1-3日において,アンモニアの減少は CRRT 38%, IRRT 23%, noRRT 19%であった.
noRRTと比較してCRRTではアンモニアの減少は有意差があったが,IRRTでは有意差はなかった.
組み入れ時期,年齢,原因,疾患活動性を補正しても,CRRTでは全死亡率の改善(21日TFS)を認めた(odds ratio [OR], 0.47 [95% confidence interval (CI), 0.26-0.82]) .
一方で, IRRTでは死亡率が増加していた (OR, 1.68 [95%CI, 1.04-2.72]) .
■Conclusions
高アンモニア血症はGrade3-4の肝性脳症,21日TFSと関連していた.
また,CRRTではアンモニアと21日TFSの改善を認めた.
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急性肝不全におけるCRRTの有効性を検討した論文.
IRRTが死亡率を増やす結果になっています.
IRRT群のほうが重症なのかと思いきや,CRRT群のほうが昇圧剤の使用が多かったり(64% vs 51%, P=0.029), INRは延長していたり(3.2 vs 2.7 P=0.003),そういうわけではない様子.乳酸値はCRRT群のほうが低い(6.2 vs 7.9 P=0.025)けど,そこまで大きく影響するとも思えない.
IRRTの細かな設定が分からないので,日本で適応できるかどうかは微妙ですが,IRRTのほうがいいかもしれません.しっかりアンモニアが下がればいいのかもしれませんが.
*海外だとlow doseでも<35ml/kg/hrです.今までIRRT施行している患者さんで,そこまでのdoseで施行している症例に出会ったことがないです….日本の保険だと600-800ml/hrが限界で,それだと10ml/kg/hr~13ml/kg/hrになるので,日本での適応には慎重にならざるを得ません(日内会誌 103:1145~1152,2014)

2017年11月13日月曜日

ADPKDにおける,腎障害進行例でのトルバプタン(サムスカ®)の効果(REPRISE Trial)

Tolvaptan in Later-Stage Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease(REPRISE Trial)

N Engl J Med. 2017 Nov 4.

Abstract(一部抜粋)
■Background 
過去の論文では,腎障害が軽微(推定クレアチニンクリアランス≧60ml/min)なADPKD患者において,トルバプタンが腎容量の増加とGFRのの低下を遅くするという結果であった.しかし,同時にアミノトランスフェラーゼとビリルビンの上昇を認めていた.より腎障害の進行したADPKD患者において,トルバプタンの効果と安全性は分かっていない.
■Methods 
他施設ランダム化比較試験.
ランダム化の前に,8週間の導入期を設け,副作用などを確認した.
18-55歳でeGFR 25~65と,56-65歳でeGFR 25-44の患者,1370人がランダム化され12ヶ月の試験を行った.
プライマリーエンドポイントはeGFRのベースラインからの変化とし,安全性は毎月検証した.
■Results 
トルバプタン内服群で,eGFRの低下は-2.34(95% confidence interval [CI], -2.81 to -1.87)であり,プラセボ群では-3.61 (95% CI, -4.08 to -3.14)であった.(difference, 1.27 ml per minute per 1.73 m2; 95% CI, 0.86 to 1.68; P<0.001). 
アミノトランスフェラーゼの上昇(>上限の3倍)はトルバプタン群で681人中38人(5.6%)に認め,プラセボ群では685人中8人(1.2%)で認めた.トルバプタン内服中止によって正常に戻った.ビリルビンの上限の2倍以上の上昇は認めなかった.
■Conclusions 
トルバプタンは腎障害が進んだADPKD患者においても,12ヶ月間において,eGFRの低下を抑えられた.(Funded by Otsuka Pharmaceuticals and Otsuka Pharmaceutical Development and Commercialization; REPRISE ClinicalTrials.gov number, NCT02160145 .).
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ADPKDのトルバプタンに関する話題.
早期腎症だけでなく,ある程度進行していても効果がありそう,という結果.
日本では既にメジャーな治療薬になっていると感じますが,アメリカではまだ未承認なんですね.なのでphase3試験,ということです.

他に一般的な血圧管理や脂質管理などしかやれることがない以上,トルバプタンは必要ですね.

一方で,ADPKD患者における死因の大きな原因は,心臓(36%),感染症(24%),脳血管(12%)となっています(J Am Soc Nephrol. 1995 Jun;5(12):2048-56.)
脳血管の12%の内訳は,脳動脈瘤破裂が6%,脳出血が5%,脳梗塞が1%となっています.
トルバプタンのADPKDにおける,腎障害進行の抑制効果は検証されていますが,今後は心臓,脳動脈瘤破裂などのイベントをどのように抑えられるか,感染症は減るのか,というところが大事になってくるのではないかと感じます.

2017年10月23日月曜日

Clinical Question:腎限局型血管炎(Renal Limited vasculitis; RLV)ではCRP陰性でもいいのか?

今回はClinical Questionとして勉強したことを,あまりインターネット上や論文でひっかからなかったので載せておきます.

Clinical Question:腎限局型血管炎(RLV)ではCRP陰性でもいいのか?

少なくとも1年前の血清クレアチニンは正常域(1.1程度)だった人が,急激なクレアチニン上昇(4.5程度)で紹介受診.CRPは陰性だったのですが,MPO-ANCAが陽性(確か150程度)だったので腎限局型血管炎として治療開始となりました.生検は本人の意向もあり施行出来ず.腎萎縮はそこまで強くなかったと記憶しています.

CRP陰性になる血管炎としては,中枢限局型が代表です.
これは,例えば髄膜炎ではCRP陰性であることも珍しくないので理解しやすかったんですが,では腎限局型では今回のようにCRP陰性が珍しくないのか?という疑問が生まれました.
(ちなみに他のCRP陰性を呈し得る代表例は,超急性期の感染症,漿膜炎や滑膜炎のないSLE,トシリズマブ投与中が挙げられます)

RPGNのガイドラインでは,RPGN早期発見のための指標として,1)尿検査異常,2)腎機能低下, 3)CRPやESR高値を挙げ,1)~3)がある場合,RPGNの疑いとして専門機関への受診を推奨しています.

RLV, GPA, MPAを比較した論文があります.全て腎生検で確定診断した症例に関してです.(Kidney Int. 2002 Jan;61(1):80-9.)
残念ながらCRPに関する記載はなかったですが,どうやらRLVではMPO-ANCA陽性例が多いようです.

成人例は見つからなかったのですが,子ども(7-14歳)の6症例では,下記のような結果になっています.これも全員腎生検で確定診断しています.
(Clin Nephrol. 2013 Nov;80(5):388-94.)

発熱のない症例が2つ,CRP陰性の症例が1つ,という報告です.
ただCRP陰性例でもESRは上昇しています.

成人例でのケースレポートが見つからなかったのですが,どうやらCRPは陰性でも否定できず,ESRは参考になりそうです.
炎症によらず,MPO-ANCA陽性で急速な腎機能悪化を認める場合は,RLVとして対応する,ということになるか.

誰か成人例のケースシリーズとかレビューとか知っている人がいたら教えてくれれば嬉しいです.

2017年10月2日月曜日

血尿の改善がIgA腎症の腎予後を改善する

Remission of Hematuria Improves Renal Survival in IgA Nephropathy

J Am Soc Nephrol. 2017 Oct;28(10):3089-3099. 

■ABSTRACT
血尿はIgA腎症で主な症状であるが,病勢の進行において血尿の影響はあまり調べられていない.112人のIgA腎症患者を,14±10.2年フォローし,尿所見などを経時的に記録した.
血尿の他には,蛋白尿(0.75g/day以下とそれより上)も分類した.
ESRDもしくは腎機能の50%の低下は,血尿が持続している群で有意に多かった (30.4% and 37.0% versus 10.6% and 15.2%, respectively; P=0.01).
多変量解析では,血尿,蛋白尿,ベースラインの腎機能,尿細間質の線維化がそれぞれ独立したESRD進行への予測因子だった.
血尿が消失した患者では,腎機能の低下する程度も改善した.(-6.45±14.66→-0.18±2.56 ml/min per 1.73 m2 per year (P=0.001))
蛋白尿0.75g/day以上の患者は,それ以下の患者と比較して,腎予後は悪かった.
更に,血尿と蛋白尿(0.75g/day以上),両方ある群では,その他の3郡と比べて有意に腎予後は悪かった.
結論として,血尿の消失はIgA腎症において良好な効果があるだろう.
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IgA腎症の治療で大事なのは血圧と蛋白尿の管理であり,RAS系阻害薬の有効性は支持されています.STOP-IgAN studyやTESTING studyではステロイドや他の免疫抑制剤の有効性を示せていません(こちらも参照,ただし腎機能が急激に悪くなる場合は,やむなしと思います)

本論文ではpersistent hematuriaを24.7 [13–71] RBC per hpfとし,negative or minimalを0.2 [0–3.1] red blood cells per high-power fieldとしている.
そして経過中施行された治療も特に有意差は認めず.
ただ,蛋白尿>0.75g/dayと血尿がある群で,更に免疫抑制剤で治療した群としなかった群で分けたとき,免疫抑制剤で治療した群のほうが腎機能の悪化が少ない傾向があった,とのこと.ステロイド+MMFの治療が多いことが影響しているのだろうか?
同時に載っていたeditorial(J Am Soc Nephrol. 2017 Oct;28(10):2831-2834.)にもあるが,今後蛋白尿がコントロールされているのは前提として,血尿に対しての介入を比較するstudyが登場するかもしれない.

ちなみに扁摘パルスも期待されてた有効性が示せてない(ということで日本と違ってKDIGOでの推奨は基本的にない)ですが,個人的な経験で,扁摘パルスして血尿が消失した症例が珍しくないんですけど,血尿が強いとかそういうのには効くかもしれないってことなんでしょうか.

奥が深い.

2017年9月18日月曜日

腎保護にアロプリノールとフェブキソスタットはどちらが効果的か?

Comparative effectiveness of allopurinol versus febuxostat for preventing incident renal disease in older adults: an analysis of Medicare claims data

 Ann Rheum Dis 2017;76:1669–1678

■Abstract
Objective:高齢者においてアロプリノールとフェブキソスタットのどちらが腎疾患予防に効果的か
Methods:後ろ向きコホート研究.2006-2012年で,新規にアロプリノールもしくはフェブキソスタットによる治療が開始となった患者を対象とした.(baseline period of 183 days without either medication). 5:1でpropensity-matched Cox regression analysesを用いて,腎疾患発生のハザード比を比較した.
results:31465例の新規のアロプリノール,フェブキソスタット処方が26443人の患者において認めた.そのうち8570例が腎疾患の発症を認めた.アロプロノールは192/1000person-yearsであったのに対し,フェブキソスタットは338/1000person-yearsであった.アロプリノールは高用量のほうが発症率は低く,200mg/day未満,200-299mg/day,300mg/day以上では,それぞれ1000 person-yearsは238, 176, 155であった.フェブキソスタット 40mg/day, 80mg/dayでは341, 326であった.
propensity-matched analysesでは,フェブキソスタットに比べて,アロプリノールはハザード比0.61 (95% CI 0.49 to 0.77)であった.
また,フェブキソスタット40mg/dayと比べて,アロプリノール200mg/day未満,200-299mg/day,300mg/day以上はいずれもハザード比は低かった.( 0.75 (95% CI 0.65 to 0.86), 0.61 (95% CI 0.52 to 0.73) and 0.48 (95% CI 0.41 to 0.55))
Conclusions :アロプリノールは高齢者の腎疾患発症においてフェブキソスタットよりも効果的である
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アロプリノールとフェブキソスタットの腎保護作用を調べた論文.

まずは高尿酸血症に対する基本的なおさらい.
CKDがない健常者の場合,まずは痛風発作の有無で治療適応を考える.
日本の2012年高尿酸血症のガイドラインでは,痛風発作があれば治療開始し,6mg/dl以下にすることが推奨.
痛風発作のない,いわゆる無症候性高尿酸血症に関しては,8mg/dl以上で他の合併症(腎疾患や心疾患など)があれば治療開始とし,また,9mg/dl以上であれば合併症がなくても治療適応だとしている.
一方で,アメリカリウマチ学会は痛風発作を起こしたものや,CKD stage3以降もしくはCKD stage2で器質的なものがあれば治療対象としている.
症状・合併症のない無症候性高尿酸血症については治療意義が分かっていない,ということは留意すべき.

ではCKDがある場合はどうするか?
これも前提として,はっきりとした尿酸を下げる事のメリットは証明されていない(正確には効果があったとする論文と効果がないとする論文が混在している)
高尿酸血症が原因でCKDが進行するのか,それともCKDがあるから尿酸値が上昇しているだけなのか,という議論がある(今回の論文中にも卵が先か,鶏が先か,という記述がある)
日本のCKDガイドラインでは治療を推奨している.
KDIGO(2012)では,根拠が足りないとして明確な記載はなし(not graded)
本論文によると,現在アロプリノールとフェブキソスタット,それぞれについてプラセボとの比較研究が進行中とのこと.

そんな中,本論文はアロプリノールとフェブキソスタット,どちらが腎保護に対してよさそうか,というもの.
痛風に対してはフェブキソスタットのアロプリノールに対する優位性がなかったとして,cost-effectivenessの点からフェブキソスタットは第一選択にすべきではないとする意見もある(Semin Arthritis Rheum. 2013 Dec;43(3):367-75)

本論文の結果としては,腎保護に対してもアロプリノールのほうがよい,というものだが,outcomeが臨床的なもの(CrやGFRの推移)ではなく,病名(ICD-9)で行っている点には注意が必要.バイアスがかかっている可能性がある.

ただ,痛風に対するstudyの結果などをみると,特に理由がなければアロプリノールが優先されるかもしれない.

2017年8月29日火曜日

尿中NH4+は血中HCO3-よりも優れた酸塩基平衡傷害の指標になるか?

Urine Ammonium Predicts Clinical Outcomes in
Hypertensive Kidney Disease

J Am Soc Nephrol 28: 2483–2490, 2017.

■ABSTRACT
代謝性アシドーシスはCKDの予後と関連する.
腎におけるアンモニアの排泄障害は,アシドーシスの病因として重要であり,特にアシドーシスを認めない人において,尿中アンモニウムイオンは血中HCO3-よりも早期の酸塩基平衡障害の指標になるかもしれない.
我々は,尿中アンモニウムイオンの量とアウトカムについて調べた.
African American Study of Kidney Disease and Hypertension participants (n=1044)にて評価した.
尿中アンモニウムイオン/dayの中央値は19.5mEqであった(95% confidence interval [95% CI], 6.5 to 43.2)
Cox回帰分析 (adjusted for demographics, measured GFR, 蛋白尿, BMI, net endogenous acid production, and serum potassium and bicarbonate)では,死亡と透析の複合アウトカムにおいて,high tertitleと比較してlow tertileではハザード比1.46(95% CI, 1.13 to 1.87) ,middle tertileでは1.14 (95% CI, 0.89 to 1.46)であった.
ベースラインでアシドーシスがない患者では,尿中アンモニウムイオン/dayが,20mEq未満の群では,20mEq以上の群と比較して,ハザード比が1.36であった (95% CI, 1.09 to 1.71).
更に,high ammonium tertitleと比較して,1年以内にアシドーシスを呈するオッズはlow ammonium tertileで高かった(adjusted odds ratio, 2.56; 95% CI, 1.04 to 6.27).
結論として,尿中アンモニウムイオンの排泄低下は高血圧性腎症において,アシドーシスが無い人でも,死亡・腎不全と関連していた.HCO3-が正常でも,アシドーシスを呈する前に,尿中アンモニウムイオン排泄が低下している人を特定しアルカリ製剤を投与することが有益かもしれない.
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今は日本のCKDガイドラインでも,KDIGOのガイドラインでも,酸塩基平衡への介入はHCO3-が主体です.HCO3-を20mEq/l以上にすることがCKDの進行を抑える,ということでHCO3-が20mEq/lよりも低ければ炭酸水素ナトリウムなどの使用が推奨されています.(KDIGOでは22mEq/l)
今回の論文は,HCO3-が正常な人でも,もっと早期に介入できる指標があるんではないの?っていうことで尿中アンモニウムイオンを評価したもの.
尿中NH4+で治療する群とHCO3-で治療介入する群での比較が必要だと思うので現時点で診療の方針に変更はないけど,今後こういうstudyが出てくるんでしょうか.

2017年8月14日月曜日

IgA腎症に対するステロイドの効果(TESTING study)

Effect of Oral Methylprednisolone on Clinical Outcomes in Patients With IgA Nephropathy

The TESTING Randomized Clinical Trial

JAMA. 2017;318(5):432-442. 

Abstract
■Importance
ガイドラインではIgA腎症で蛋白尿が持続する場合にステロイドを推奨しているが,その効果は分かっていない.
■Objective
ステロイドの効果と安全性を評価する.
■Design, Setting, and Participants
多施設,二重盲検化,ランダム化試験であり,750人のIgA腎症の患者(蛋白尿 1g/day以上でeGFR 20~120の患者で,RAS系阻害薬を少なくとも3ヶ月以上内服している)を,335症例のプライマリーアウトカムが評価できるまで追跡した.
■Interventions
メチルプレドニゾロン内服(0.6-0.8mg/kg/day, 最大48mg/day) 136人とプラセボ群 126人に振り分け,2か月間内服しその後4-6ヶ月で漸減した.
■Main Outcomes and Measures
プライマリー複合アウトカムはESRD, 腎不全による死亡,eGFRの40%の低下とした.
安全性の評価は感染,新規の糖尿病,消化管出血,骨折/骨壊死,心血管イベントとした.
これらの評価の為,5年間のフォローアップが必要だと判断した.
■Results
262人の患者を振り分けた後(平均年齢38.6 [SD, 11.1] years; 96 [37%] women; eGFR, 59.4 mL/min/1.73 m2; 蛋白尿 2.40 g/day) ,中央値で2.1年フォローアップした.深刻な副作用のため試験は中止となった.メチルプレドニゾロン内服群で20人(14.7%)の患者に深刻なイベントが生じた.(プラセボ群は4人, 3.2%,P = .001; risk difference, 11.5% [95% CI, 4.8%-18.2%])
感染症が多く (11 [8.1%] vs 0; risk difference, 8.1% [95% CI, 3.5%-13.9%]; P < .001), そのうち2名が死亡した.
腎臓のアウトカムはメチルプレドニゾロン内服群 8人(5.9%)で,プラセボ群では20人(15.9%)であった.
 (hazard ratio, 0.37 [95% CI, 0.17-0.85]; risk difference, 10.0% [95% CI, 2.5%-17.9%]; P = .02).
■Conclusions and Relevance
経口プレドニゾロン内服は深刻な副作用,特に感染症を増やした.腎臓に対する潜在的な利益はありそうだが,試験の早期終了の為,結論付けはできない.
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最近IgA腎症が熱いのでしょうか.
以前にもSTOP-IgAN study(N Engl J Med. 2015 Dec 3;373(23):2225-36.)で,支持療法だけでいいんではないかっていう結果でした.(急速に腎機能悪化する症例などは除外されていましたが)
本論文も,経口ステロイド単独でも,やはりデメリット>メリットかもしれないという結論.
免疫抑制剤の投与は慎重に判断するべきなんでしょうね.

一方,日本の2014年のIgA腎症のガイドラインでは,蛋白尿が0.5g/day以上あれば腎機能に関わらず,ステロイド考慮という記載もあります.
どちらかといえば日本は「早いうちに叩け!」っていう施設が多いような気もしますが,2017年のガイドラインではどう変わったのでしょうか.そういえば注文してなかった….

2017年7月31日月曜日

Correspondence; 補液と造影剤腎症

Hydration and contrast-induced kidney injury

Lancet, The, 2017-07-29, Volume 390, Issue 10093, Pages 452-453

■Correspondence
Estelle Nijssenらは造影剤腎症に対する予防に関する報告をした.
Nijssenらが本文中で述べているように,この慣習はガイドラインでも言及されているが,コンセンサスに基づくものである.しかしながら,eGFR29以上における造影剤腎症の高リスク患者において,予防を行わないことを提唱するのは時期尚早ではないか.
Nijssenらの報告では,造影剤腎症の発生率が他の報告と比較して少ない.これは論文で対象となった患者層が,真の高リスク群ではなかった可能性がある.
GFRに基づく閾値は、経皮的冠動脈インターベンションを受けている患者における造影剤腎症のリスクを予測するには難しい.他には,造影剤の使用量が少なかったから,という可能性がある.
私たちが過去に行った研究では,AKIのリスクは低いと示唆されたが,それは造影剤の使用量を腎機能に応じて調節していた.
(中略)
よって,造影剤の量が多い場合などでは予防投与を行わないというのは時期尚早かもしれない.
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久し振りの投稿は,造影剤腎症関連.
こちらの記事に対するCorrespondenceであり,やはり造影剤の投与量について言及しています.逆に言えば造影剤の量を気を付けたり,適切に高リスク群(脱水など)を拾い上げて介入すれば,造影剤腎症はほぼ予防できる,ともいえるのかもしれない.
ただGFR 29以下にはすぐには当てはめられないと思いますが.

2017年7月7日金曜日

KDIGO CKD-MBD 2017 ガイドライン up date 日本語要約

KDIGO 2017 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE UPDATE FOR THE DIAGNOSIS, EVALUATION, PREVENTION, AND TREATMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASE–MINERAL AND BONE DISORDER (CKD-MBD)

KDIGO HPより(http://kdigo.org/guidelines/ckd-mbd/)
*Kidney Int. 2017 Jul;92(1):26-36.で要約もみれます(英語)
*2009年版より変更箇所は下線を引いてあります.
*日本語訳が間違っている可能性がありますので,その場合はコメントお願いします.利用は各自自己責任でお願いします.
*一部翻訳をサボっています(骨マーカーのところなど)
*小児,幼児の項目はそのままor記載していませんので原著参照をお願いします.

■Chapter 3.1: Diagnosis of CKD-MBD: biochemical abnormalities
3.1.1: 成人ではCKDG3aから,子どもではCKDG2からカルシウム(Ca),リン(P),PTH,alkaline phosphatase activityのモニタリングを開始する(成人1C, 子ども2D)
3.1.2: CKDG3a-G5Dにおいては,CKDの進行の度合いに応じてモニタリングしていく(Not Graded)
・ CKD-G3a-G3bにおいて
→6-12ヶ月毎にCa,Pを測定する.PTH測定はCKD進行に応じて行う.
・ CKDG4において
→3-6ヶ月毎にCa,Pは測定し,PTHは6-12ヶ月毎に測定する.
・ CKDG5(D)において
→1-3ヶ月毎にCa,Pを測定し,PTHは3-6ヶ月毎に測定する.
・ CKD G4-G5Dにおいて
→alkaline phosphatase activityは12ヶ月毎に測定する.PTHが上昇していれば頻繁に測定する (Chapter 3.2 参照).
CKD-MBDの治療を受けている人もしくは異常があれば,より頻回に効果や副作用をモニタリングしてもよい(Not Graded).
3.1.3:CKDG3a-G5Dでは,25(OH)Dの測定を推奨する.そして治療介入するか判断する (2C).ビタミンD欠乏があれば一般的な患者と同様に治療を行うことを推奨する(2C).
3.1.4:CKDG3a-G5Dでは,一回の検査結果よりも経時的な変化など総合的に判断して治療するかどうかを決める (1C).
3.1.5:CKD G3a–G5Dでは,CaとPの積よりも,Ca,Pのそれぞれの基準値に応じて治療することを推奨する (2D).
3.1.6:CKGG3a-G5Dでは,検査結果のレポートは血漿か血清かなど,正確な測定方法をきちんと知らせること (1B).

■Chapter 3.2: Diagnosis of CKD-MBD: bone
3.2.1: CKDG3a-G5DでCKD-MBDの証拠があるand/or骨粗鬆症のリスクがある場合は,骨密度の測定を推奨する (2B).
3.2.2:CKDG3a-G5Dでは, 腎性骨異栄養症が治療決定に影響する場合,骨生検を行ってもよい (Not Graded).
3.2.3:CKD G3a–G5Dでは,PTHや骨型アルカリホスファターゼの測定を,骨代謝の予測に使用することを推奨する(2B).
3.2.4:CKD G3a–G5Dでは,bone-derived turnover markers of collagen
synthesis (such as procollagen type I C-terminal propeptide) and breakdown (such as type I collagen cross-linked telopeptide, cross-laps, pyridinoline, or deoxypyridinoline)のルーティーンでの測定を推奨しない (2C).
3.2.5:We recommend that infants with CKD G2–G5D have their length measured at least quarterly, while children with CKD G2–G5D should be assessed for linear growth at least annually (1B).

■Chapter 3.3: Diagnosis of CKD-MBD: vascular calcification
3.3.1: CKD G3a–G5Dでは,腹部レントゲンの側面像を血管石灰化病変の検索に推奨し,また,心臓超音波を弁の石灰化検索に推奨し,代わりにCTを利用してもよい(2C).
3.3.2:CKD G3a–G5Dで血管や弁の石灰化が指摘されている場合,心血管イベントの高リスクだと考える(2A). It is reasonable to use this information to guide the management of CKD-MBD(Not Graded).

■Chapter 4.1: Treatment of CKD-MBD targeted at lowering high serum phosphate and maintaining serum calcium
4.1.1:CKD G3a–G5Dでは,CKD-MBDの治療はP,Ca,PTHを連続的・総合的に判断して行う(Not Graded).
4.1.2:CKD G3a–G5Dでは,Pは正常値を目標にすることを推奨する(2C).
4.1.3:CKD G3a–G5Dの成人は, 高Ca血症を避ける(2C). In children with CKD G3a–G5D,we suggest maintaining serum calcium in the age-appropriate normal range (2C).
4.1.4:CKD G5Dでは,透析液のCa濃度を1.25 and 1.50 mmol/l(2.5 and 3.0 mEq/l)にすることを推奨する(2C).
4.1.5:CKD G3a-G5Dでは,リン吸着薬を使用するかどうかの決定は,悪化しているか,持続して高値かどうかで行う(Not Graded).
4.1.6:CKD G3a–G5Dでリン吸着薬を使用している成人では,Ca含有のリン吸着薬使用を制限することを推奨する(2B). In children with CKD G3a–G5D, it is reasonable to base the choice of phosphate-lowering treatment on serum calcium levels (Not Graded).
4.1.7:CKD G3a-G5Dでは,アルミニウム含有のリン吸着薬の長期使用は避ける事を推奨し,in patients with CKD G5D, avoiding dialysate aluminum contamination to prevent aluminum intoxication (1C).
4.1.8:CKD G3a–G5Dでは,高P血症の治療としてリンの食事制限を推奨する(単独もしくは他の治療との組み合わせで)(2D). It is reasonable to consider phosphate source
(e.g., animal, vegetable, additives) in making dietary recommendations (Not Graded).
4.1.9:CKD G5Dでは,we suggest increasing dialytic phosphate removal in the treatment of persistent hyperphosphatemia (2C).

■Chapter 4.2: Treatment of abnormal PTH levels in CKD-MBD
4.2.1:CKD G3a–G5で非透析患者において,適切なPTHレベルは分かっていない.しかし,PTH値が上昇をつづけたり,正常値より高値を維持する場合は,補正出来得る因子(血清P,血清Ca,VitD欠乏, Pの過剰摂取)を調べることを推奨する(2C).
4.2.2: CKD G3a–G5で成人の非透析患者では,カルシトリオールやビタミンD製剤のルーティンでの使用は推奨しない(2C). It is reasonable to reserve the use of calcitriol and vitamin D analogs for patients with CKD G4–G5 with severe and progressive hyperparathyroidism (Not Graded).
In children, calcitriol and vitamin D analogs may be considered to maintain serum calcium levels in the age-appropriate normal range (Not Graded).
4.2.3: CKD G5Dでは,iPTH値を正常上限の2-9倍に維持することを推奨する(2C).
We suggest that marked changes in PTH levels in either direction within this range prompt an initiation or change in therapy to avoid progression to levels outside of this range (2C).
4.2.4:CKDG5DでPTHを下げる治療を必要とする場合,カルシウム受容体作動薬,カルシトリオール,ビタミンD製剤の使用,もしくはカルシウム受容体作動薬+カリシトリオール,カルシウム受容体作動薬+ビタミンD製剤の併用を推奨する(2B).
4.2.5: In patients with CKD G3a–G5D with severe hyperparathyroidism (HPT) who fail to respond to medical or pharmacological therapy, we suggest parathyroidectomy (2B).

■Chapter 4.3: Treatment of bone with bisphosphonates, other osteoporosis medications, and growth hormone
4.3.1:CKD G1–G2で骨粗鬆症があるand/or骨折のリスクが高い場合,通常の患者と同様にマネジメントを行う(1A).
4.3.2:CKD G3a–G3bでPTHが正常値で骨粗鬆症があるand/or骨折のリスクが高い場合,通常の患者と同様のマネジメントを行う(2B)
4.3.3:CKD G3a–G5DでCKD-MBDがあり,骨密度が低いand/or fragility fracturesがある場合,CKD-MBDとCKD進行の影響を考慮しつつ,骨生検を考慮する(2D).
4.3.4: In children and adolescents with CKD G2–G5D and related height deficits, we recommend treatment with recombinant human growth hormone when additional growth is desired, after first addressing malnutrition and biochemical abnormalities of CKD-MBD (1A).

■Chapter 5: Evaluation and treatment of kidney transplant bone disease
5.1:移植を受けた後は,Ca,Pが一定になるまで最低でも週1回の測定を推奨する(1B).
5.2:移植を受けた後は,Ca,P,PTHの測定頻度はCKD進行に応じて決める(Not Graded).
・ CKD G1T–G3bTにおいて,
→Ca,Pは6-12ヶ月毎に測定し,PTHは一回測定し,後はCKD進行の程度に応じて測定する
・ CKD G4Tにおいて,
→Ca,Pは3-6ヶ月毎に測定し,PTHは6-12ヶ月毎に測定する
・ CKD G5Tにおいて,
→Ca,Pは1-3ヶ月毎に測定し,PTHは3-6ヶ月毎に測定する
・ CKD G3aT–G5Tにおいて,alkaline phosphatasesは年1回測定し,PTH上昇を認める場合はより頻回に調べる(Chapter 3.2も参照).
CKD-MBDの治療をうけている場合,効果と副作用をみる目的で頻回に調べてもよい(Not Graded).
It is reasonable to manage these abnormalities as for patients with CKD G3a–G5 (see Chapters 4.1 and 4.2)(Not Graded).
5.3:CKD G1T–G5Tでは,25(OH)Dの測定を推奨し,基準値と介入を決定する上で繰り返し測定する(2C).
5.4:CKD G1T–G5Tでは,ビタミンD欠乏がある場合,一般的な患者と同様に治療することを推奨する(2C).
5.5:CKD G1T–G5Tで骨粗鬆症のリスクがある場合,we suggest that BMD testing be used to assess fracture risk if results will alter therapy (2C).
5.6: In patients in the first 12 months after kidney transplant with an estimated glomerular filtration rate greater than approximately 30 ml/min/1.73 m2 and low BMD, we suggest that treatment with vitamin D, calcitriol/alfacalcidol,
and/or antiresorptive agents be considered (2D).
・ We suggest that treatment choices be influenced by the presence of CKD-MBD, as indicated by abnormal levels of calcium, phosphate, PTH, alkaline phosphatases, and 25(OH)D (2C).
・ It is reasonable to consider a bone biopsy to guide treatment (Not Graded).
There are insufficient data to guide treatment after the first 12 months.
5.7:CKD G4T–G5Tで骨密度の低下がない場合,CKD G4–G5(非透析患者)と同様にマネジメントする (2C).

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リン吸着薬について(参照)も参考にしてほしいですが,今回のup dateではCa含有のリン吸着薬の推奨度が落ちています.本文によると''avoid''にしたかった様子.
ただ,じゃあどのリン吸着薬がよいのか,個々の薬剤については記載なし.
ちなみに2013年のlancetのメタナリシス(Lancet. 2013 Oct 12;382(9900):1268-77.)では,ほとんどの論文がセベラマーと炭酸ランタンを使用していて,炭酸カルシウムと比較して死亡率の改善を認めているという結果.

Caについては2009年では正常値に維持する,という推奨でしたが,今回は高Ca血症は避けましょうという記載で,低Ca血症は軽くて症状がなければ放置でもいいんじゃない?という記載.これはシナカルセトの登場でこういう記載になったと思いますが,どうなんでしょうね.確かにカルシウムの活性はイオン化カルシウムに依存するので,イオン化カルシウムが正常ならいいのかもしれません(論文で実証されているかは知らないですが)

骨生検の記載が多くなったと思うんですけど,実際にやってるところはあまり見ないですね….

まとめると,リンは正常値を目指すけど非Ca含有にして,カルシウムは症状がないなら少し低いくらいなら放置でもよいかもしれず,ビタミンD欠乏は治療し,PTHは異常を起こす原因を探して補正しても無理なら治療介入する,といった感じ.

2017年7月3日月曜日

透析患者におけるアピキサバン(エリキュース®)の薬物動態

Apixaban Pharmacokinetics at Steady State in Hemodialysis Patients

J Am Soc Nephrol 28: 2241–2248, 2017

■ABSTRACT
末期腎不全患者(ESRD)において,心房細動(Af)の治療でワーファリンを使うことが有用か有害かはよく分かっていない.他の抗凝固薬は使えないかどうかが疑問として出てくる.私たちは維持血液透析患者(HD)においてアピキサバンの薬物動態を調べることにした.
7人のHD患者において,8日間,アピキサバン2.5mg1日2回(5mg/day)を投与し,アピキサバンの血中濃度をday1とday8(非透析日)で調べた.
2.5mg1日2回投与では,有意な血中濃度の上昇を認めた.
投与後24時間で,The area under the concentration-time curveは628→2054ng h/ml(P,0.001)へと上昇した.
トラフ値は45→132ng/ml(P,0.001)へ上昇した.
9日目にアピキサバン2.5mg内服後,透析中の血中濃度を調べ,4%が透析で除去された.
5日間の休薬を行い,5人の患者にアピキサバン5mg1日2回(10mg/day)を同様に内服させた.The area under the concentration-time curveは更に6045ng h/mlまで上昇し(P=0.03),トラフ値は218ng/ml(P=0.03)で,腎機能正常者の90パーセンタイルを超えた.
アピキサバン2.5mg1日2回は透析患者において,腎機能正常での5mg1日2回内服と匹敵する結果であり,また,透析患者におけるワーファリンの代替薬になり得る.
アピキサバン5mg1日2回は透析患者においては治療域を超えるので避けるべきである.
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透析患者におけるアピキサバンの薬物動態に関する研究.
結論から言うと症例数も少ないし,死亡率と副作用も分からないのでアピキサバンを投与する理由に全くならないけれども,今後の研究課題には出来そうですね.

少しAf合併の透析患者について振り返ってみると・・・.

まず,各種ガイドラインの記載は下記のとおり.
・ 日本循環器学会(2013年発行)の「心房細動治療のガイドライン」には明確な記載なし
・ 日本透析学会(2011年発行)の「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」では「心房細動に対する安易なワルファリン治療は行わないことが望ましいが,ワルファリン治療が有益と判断した場合には PT-INR<2.0 に維持する(2C)」と記載あり
・ American Heart Association(AHA, 2014年)の「2014 AHA/ACC/HRS Guideline for the Management of Patients With Atrial Fibrillation」では,「For patients with nonvalvular AF with a CHA2DS2-VASc score of 2 or greater and who have end-stage chronic kidney disease (CKD) (creatinine clearance <15 mL/min) or are on hemodialysis, it is reasonable to prescribe warfarin (INR 2.0 to 3.0) for oral anticoagulation (82). (Level of Evidence: B)」,「The direct thrombin inhibitor dabigatran and the factor Xa inhibitor rivaroxaban are not recommended in patients with AF and end-stage CKD or on dialysis because of the lack of evidence from clinical trials regarding the balance of risks and benefits (74–76,84–86). (Level of Evidence: C)」と記載あり.(*ただし出血リスクと相談,とも記載あり)

日本透析学会のガイドラインではワーファリンは原則禁忌となっている.しかし,場合によっては使用も考慮し出血リスクとの兼ね合いだという記載があり,なんとも言い難い.そして,INR<2の推奨も,エビデンスレベルとしては高くない.

上記のように,透析患者において,Af合併例で抗凝固すべきかどうかの一定の見解はない.ワーファリンが死亡率を減らさなかったという報告もある(Open Heart 3:e000441, 2016)し,むしろワーファリンの作用機序(Calciphylaxisの誘発)を考えると好ましくないのではないかという意見すらある(Europace (2010) 12 (12): 1666-1672.)

そうした中での今回の研究.ワーファリンの効果が分かってないなら他の薬剤は使えないのか?という趣旨の様子.
アピキサバン2.5mg1日2回で血中濃度としては保たれているという結果.現時点(2017年7月現在)では透析患者に使えるNOAC(最近はDOACとも)はないが,今後はこういった研究も増えていきそう.

今のところAf合併のHD患者では,ワーファリンしか選択肢がない上,至適INRは不明(おそらくINR<2が安全だとは思うけど症例による)なので,HAS-BLED scoreなどで出血リスクを評価しリスク・ベネフィットに応じて投与,といったところか.

2018/08/30追記
腎機能低下(透析含む)のDOACについてはこちらもご参照ください.

2017年6月24日土曜日

ICU入室を要したsevere capillary leak syndromeの臨床像(全身性毛細血管漏出症候群)

The Clinical Picture of Severe Systemic Capillary-Leak Syndrome Episodes Requiring ICU Admission.

Crit Care Med. 2017 Jul;45(7):1216-1223.

Abstract
■OBJECTIVE
全身性毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome;以下CLS)とは,非常に稀な,循環血液減少性のショックを繰り返す病気である.
臨床像・検査所見・アウトカムを評価したデータは少なく,本論文ではICUでマネージメントを要したCLSの臨床像を示す.
■DESIGN, SETTING, PATIENTS:
他施設における後ろ向き研究である.1992年5月-2016年2月にヨーロッパのICUでのものである.
■MEASUREMENTS AND MAIN RESULTS:
37人の患者で,59のエピソードが生じ,今回の対象とした.
34人(91.9%)でモノクローナルなIgGの上昇があり,20人(58.8%)はκ軽鎖だった.
ICU入室時のHbは,中央値20.2g/dl(17.9-22g/dl)であり,蛋白は50g/L(36.5-58.5g/L)であった. 
IVIGが15エピソード(25.4%)で投与されていた.12エピソード(20.3%)でコンパートメント症候群を起こしていた.全患者の内,11人(18.6%)が死亡した.
37人の患者の最終エピソードで解析すると,SOFAスコア10以上 (オッズ比, 12.9 [95% CI, 1.2-140]; p = 0.04)であり,補液の総投与量が10.7L 以上(オッズ比, 16.8 [1.6-180]; p = 0.02) が,死亡の予測因子であった.
■CONCLUSIONS:
補液の総投与量が死亡と関連していた.IVIGは生存率を変えなかった.
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kidney internationalに総説(以下review)が出ていた(http://dx.doi.org/10.1016/j.kint.2016.11.029)ので,その関連で.
本論文はICU入室を要したCapillary leak syndromeの患者の臨床像をまとめたもの.
補液が多いことはそれ自体がよくないみたい,という結論ですが,重症度を反映しているだけかもしれないですね.reviewではIVIGの有効性が示された報告があるという記載でしたが,本論文では特に予後に影響がなかったと.非常に稀な疾患なので,検出パワーが足りなかっただけかもしれないですね.

本当に簡単にreviewをまとめると,
・ Capillary leak syndromeは,蛋白質の血管透過性を亢進する種々の病気を示し,特発性全身性Capillary leak syndrome,Clarkson's病,卵巣過剰刺激症候群,血球貪食症候群,ウイルス性出血熱,自己免疫疾患,蛇咬傷,薬物,ゲムシタビンなどが引き起こす.
・ しかし診断として,多くの症例で血液培養陰性の敗血症とされたり,低アルブミン血症が原因だと考えられているかもしれない.
・ AKIはよく認める所見である.
・ 多くの患者はモノクローナルな蛋白上昇を血中に認める
・ 治療は体液管理が最も重要である.
・ 症例報告として,IVIG,テオフィリン,インフリキシマブといったものがある.
(*2017/09/24追記 IVIGが有効だったとする論文が出ました→Am J Med. 2017 Oct;130(10):1219.e19-1219.e27.)
・ ステロイドが奏功した報告もある(特に薬物が原因の場合)

なんだか分からないけれどショックを繰り返している患者,という臨床像なんでしょうか.

2017年6月20日火曜日

造影剤腎症のリスクのある成人に対して予防的輸液は不要か

Prophylactic hydration to protect renal function from intravascular iodinated contrast material in patients at high risk of contrast-induced nephropathy (AMACING): a prospective, randomised, phase 3, controlled, open-label, non-inferiority trial.

Lancet. 2017 Apr 1;389(10076):1312-1322.

Abstract(一部)
■BACKGROUND
生理食塩水の点滴は,造影剤腎症の予防においてガイドラインでも推奨されている.
しかしながら,臨床的な効果や費用対効果が,予防しない群と適切に比較し評価されているとは言えない.これらを評価する目的でAMCING trialを行った.
■METHODS
ランダム化前向き試験,オープンラベルであり,造影剤腎症の高リスクがある患者群での非劣勢を評価する.
18歳以上の造影剤が必要になる成人をランダム(1:1)に生理食塩水を投与する群と予防しない群に分けた.
eGFRが30未満の人,過去に透析を受けたことがある人などは除外した.
プライマリーアウトカムは造影剤使用後2-6日以内造影剤腎症の発症(ベースラインからCrが25%もしくは44μmol/L(0.5mg/dl)以上上昇)とし,また,予防しない場合との費用対効果も比較した.
Crの測定は造影剤投与直前,2-6日,そして26-35日後に行った.
intention-to-treatで行い,非劣勢マージンは2.1%とし,ClinicalTrials.govにも登録した.
■FINDINGS
2014年6月17日~2016年7月17日の期間で,660人が割り振られた.予防なしが332人,生理食塩水投与群が328人だった.2-6日のクレアチニンが評価出来たのは予防なしで92%,生理食塩水投与群で90%だった.造影剤腎症の発症は予防なしで2.6%,
生理食塩水投与群で2.7%で有意差はなかった.予防しない方がコストは抑えられた.35日の時点で透析になった人や死亡はいなかった.
■INTERPRETATION
予防なしでも,生理食塩水を投与した群と比較して,造影剤腎症の発症については非劣勢であり,コストは抑えられた.
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造影剤腎症の予防が必要かどうか評価した論文.
高リスク群として,
・ eGFR 45-59の場合は糖尿病もしくは,2つ以上のリスク( 年齢>75歳以上,貧血,心血管病の既往,NSAIDsもしくは利尿剤使用の使用)
・ eGFR 30-45
・ 多発性骨髄腫もしくはsmall chain proteinuriaを伴うリンパ形質細胞性リンパ腫
上記のいずれかと定義している.
eGFR 30未満が除外されていることには要注意.

また,本論文では入院患者が生理食塩水投与群9%,予防なしで8%と低い.
除外項目として救急で処置が必要な人やICU入室の人も除外されており,重症患者は考慮されていない可能性がある(そもそも重症なら造影剤腎症のリスクにかかわらず造影するよね,っていう指摘はごもっとも.)
また,BMIが共に28程度にも関わらず,造影剤の使用量の平均は共に90ml前後と少ない.日本の造影剤腎症のガイドラインでも引用されている報告(Clin J Am Soc Nephrol. 2008 Sep;3(5):1274-81.)では,100ml以下で造影剤腎症の発生頻度が低かったとしており,本研究では,そもそも造影剤腎症を起こしにくいセッティングだった可能性がある.(Lancetの論文は低浸透圧造影剤で,Clin J Am Soc Nephrolの論文は等浸透圧~低浸透圧だが,そもそも低浸透圧が等浸透圧に比べて明らかに優れているかどうかは明確な答えがない)

上記を考えると,eGFR 30以上の場合,造影剤の量が少量で済むなら予防は必要ないのかもしれない,と考えられると思う.
ただ,完全に個人的な印象として,造影CTならばeGFR 40以上あれば,特に予防しなくても大丈夫な印象です.

2017.07.31追記
Lancetにこの論文に関するCorrespondenceも出ています.
こちらの記事に参照.