2018年6月25日月曜日

腎機能低下時(透析含む)のDOAC

Chronic kidney disease and arrhythmias: highlights from a Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Controversies Conference

kidney international 2018 in press

(以下本文よりかなり意訳して抜粋)
CKD患者は,心房細動などの不整脈を合併しやすい.
だが,このような患者層は,歴史的に,臨床研究において取り上げられることが少ない.
KDIGOではこのようなことを対象にカンファレンスを開催した.
そのカンファレンスの要点に焦点を絞って報告する.
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主に心房細動の抗凝固の内容がまとまっていて参考になります.
本文を参照して欲しいのですが,あまりにもよくまとまっておいたので引用.


以前の記事で透析時のアピキサバンについて言及しましたが,この表でも取り上げられています.
リバロキサバンも取り上げられていますが,いずれもデータ不十分には変わりありません.この表でのワーファリンの目標INRは日本透析学会推奨のINRとは異なりますので注意が必要ですね(日本透析学会は,ワーファリンを推奨していませんが,投与するならINR<2)

今後,この分野もデータが蓄積されていくんでしょうね.

2018年6月4日月曜日

Clinical Question:クレメジン(Kremezin, AST-120)の効果とは?

■CQ:クレメジンの効果とは??


今回はClinical questionとして,尿毒症症状の改善と透析導入の遅延を謳っているクレメジンについてまとめます.

添付文書には下記のように記載されている.
禁忌:消化管に通過障害を有する患者(排泄に支障をきたす恐れがある)
用量:通常,成人に1日6gを3回に分割し,経口投与する.
慎重投与:
1. 消化管潰瘍,食道静脈瘤を有する患者(固体のまま消化管を通過するので,患部を刺激するおそれがある.)
2. 便秘を起こしやすい患者(便秘を増悪するおそれがあり,また基礎疾患に肝障害を有する患者では血中アンモニア値の上昇があらわれることがある.)

■日本ではどうか?
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013より.
’’球形吸着炭(AST‒120)は腎機能の指標を一部改善させ,CKD の進行を抑制させる可能性があるため,使用を考慮してもよい.(推奨グレードC1)’’
ガイドラインで引用されている文献を参照する.
CAP‒KD 試験(Am J Kidney Dis. 2009 Sep;54(3):459-67.)
60人の保存期CKD患者(Cr 5.0未満)を対象とした試験で,通常通りの低蛋白食&降圧群と,それに加えてAST-120投与(6g/day)した群を1年比較したランダム化試験.
プライマリーアウトカムは複合エンドポイントとして血清Cr,透析や移植,そして死亡を検討した.結果はプライマリーアウトカムでは有意差を認めなかった.
ただし推定CCrの低下速度はAST-120投与群で緩やかであった(0.15 vs 0.12 mL/min/y; P=0.001)
単施設からの報告(Ren Fail. 2008;30(9):856-60.)では,192人のCKD患者を検討し,AST-120投与群(101人)で透析導入時に血清クレアチニンが高く(AST-120 group, 8.2 ± 1.9; non-AST-120 group, 7.6 ± 2.1; p = 0.031),eGFRが低く(AST-120 group, 5.7 ± 1.7; non-AST-120 group, 6.9 ± 2.5; p < 0.001),また,5年生存率はAST-120投与群で有意に高かった(72.6% vs 52.6%, p=0.018).
他の観察研究でも死亡や透析導入といったハードアウトカムに有効性は示せていないものの,AST‒120 により血清Cr 値に基づく腎機能の指標の推移が改善したという報告は多数みられるということで,エビデンスに基づくCKD診療ガイドラインでは上記の推奨になっている.

■海外ではどうか?
KDIGO Guideline 2012では言及なし(そもそも日本以外で採用されていないからでしょうか)
文献的には,1年間でのRCTで腎機能低下(Cr, 透析,移植)に寄与しなかったものの,倦怠感は改善したという報告がある(Am J Kidney Dis. 2006 Apr;47(4):565-77.)
規模の大きなRCTも存在する.
EPPIC試験(J Am Soc Nephrol. 2015 Jul;26(7):1732-46.)は,欧米を中心に約2,000人の保存期CKD患者を対象に, AST-120(9g/day)投与群とプラセボ群について、イベント(透析導入、腎移植、血清クレアチニン値の倍加のいずれか)の発生を主要評価項目として行ったものであり,結果は有意差なしというものだった.副作用も両群で有意なものはなかった.

■結論として
思ったよりもエビデンスは乏しい.特に透析導入を遅らせるという確たる証拠はない.
安全性は比較的高そうであるので,投与するとしたら,尿毒症症状が強い症例(特に倦怠感)には有効かもしれない.